目次
[1] 遺品整理で買取対象となる主な品目とは
遺品整理で買取店が対象にする骨董品は、主に、掛け軸や絵画、中国美術、茶道具、陶磁器、さらに仏教美術、金工作品、蒔絵・漆芸、彫刻、ブロンズ、西洋アンティークといったものです。もともと骨董品の定義は、100年以上前につくられた美術品や工芸品、装飾品などで美術的・歴史的価値を持つものを指します。もちろん、価値というのは主観的なものですから、骨董品はかなり広い意味で使われる名称だと考えることができます。腕時計、カメラ、和楽器などは美術品でも工芸品でもありませんが、古くて技術的・歴史的な価値をもつものは骨董品として珍重されています。鉄道模型、御所人形、香木といったものも買取対象です。骨董品の買取専門店が買取する品が骨董品であると考えることが、骨董品としての価値あるものを見過ごさないポイントと言えるかもしれません。
[2] 高価買取が期待できる骨董品5選
骨董品の範囲は自分で決めてしまわないほうが良いのですが、骨董品の主流となり、時に非常に高い価格が付くものはある程度決まっています。それは「掛け軸」「絵画」「茶道具」「陶磁器」「中国美術品」の5品目です。
掛け軸
掛け軸は、書院造りという伝統的な日本の住宅様式に欠かせない床の間が生んだ日本の伝統的な美術品のひとつです。床の間があることで、この壁を装飾する美術品として掛け軸が生まれ、発達しました。絵画(日本画や墨絵)や書を表装して壁に掛けられるようにしたもので、巻いて収納することができます。掛け軸が生まれることで絵画や書が美術品として発達し、現在でも骨董品として高く評価されています。昔ながらの日本の住宅には必ず客間があり、そこには床の間がありました。床の間がある以上、掛け軸の用意は欠かせません。しかも、掛け軸は1本というわけにはいきません。いつも同じものではセンスが疑われてしまいます。四季や節句などに合わせて掛け替えるのが常識であり、季節に応じて替えることで、季節感を演出しながら客人を迎えます。特に季節感のない書であっても、1種類というわけにはいきません。床の間のある家には確実に複数の掛け軸があります。
絵画
美術館や美術展で鑑賞するものだった絵画が、日本の家庭の壁を飾るようになるのは、1970年代の半ばから1980年代にかけてのマイホームブームの中で、50歳前後で部長クラスに昇進したサラリーマンが、郊外に庭付き一戸建ての住宅を構えるようになってからです。玄関には絵の一枚も掛けたいと、少し背伸びをして東山魁夷や加山又造、林武、東郷青児、中川一政、梅原龍三郎、平山郁夫など、画壇で活躍中の画家の小さな絵やドローイングを飾ったり、まだ若い画家の習作を買い求めたりして、家に絵を飾るということが一般的なものになっていきました。家の押し入れの奥に包まれていた絵が、有名画家のまだ評価が高まる前の若書きで、今では高額で取り引きされているという例もあります。
茶道具
茶道具は茶道に用いられる道具を総称したもので、茶碗や茶杓、茶釜などが代表的なものです。茶道を嗜む人は、1960年頃には600万人を数えたといわれます。その後少しずつ減少しながらも、1970年代、80年代に習い事としてお茶を嗜む人は400万人近くに上ったとみられています。茶道は鎌倉時代から親しまれ、室町時代に大きく花開いた日本の伝統文化で、著名な作家によって創作された銘品や千家十職といわれる職人による品が伝承され、特に茶碗は美術的な価値が高く、千利休や古田織部に由来する茶道具は人気があり高額で取引されているものが少なくありません。
陶磁器
縄文時代以降、世界のなかでも比較的古くから製作が盛んだったと言われる日本の陶磁器。焼きものにふさわしい粘土や陶石が産出したこと、大陸から作家が渡来し、釉薬の技術やより高温で焼ける窯の技術を伝えたことなどがその大きな要因です。特に施釉による多彩な表現ができる陶器は、戦国時代に大きく広がり、茶の湯の流行もあって全国で生産されるようになりました。特に日本六古窯として知られる越前・瀬戸・常滑・信楽・丹波・備前の6つの窯は中世から現在まで生産が続いています。この他にも福島の大堀相馬焼、鹿児島の薩摩焼、岐阜の美濃焼、さらに江戸時代以降と時代は比較的新しいものですが、栃木県の益子焼もよく知られています。茶碗や皿、壺などさまざまな陶磁器が骨董品市場で流通しています。
中国美術品
殷・周時代から唐・宋・明・清時代と続く数千年にわたる歴史を持つ中国美術は、青銅器や書画、陶磁器などを中心に世界中のコレクターの注目を集めています。特に唐代の色彩豊かな三彩陶器、宋代の青白磁は非常に高度な技術と洗練された美しさで知られ、明代には景徳鎮の青花磁器が発展しました。また、彫刻作品では翡翠や象牙を使った精巧な作品がよく知られています。中国美術は歴史も長く、高い完成度を誇る逸品が少なくありませんが、それだけに贋作のビジネスも横行しその市場規模も大きいといわれます。骨董品に贋作はつきものですが、特に中国美術品は注意が必要です。
[3] 本物と贋作の見分け方のポイント
先祖代々受け継がれ、これは価値の高い名作だから大切にと聞いていたものが、鑑定に出してみたら贋作だったと肩を落とす人は少なくありません。そもそも一目で誰にも分かるような贋作はないので、見分けるのは至難の業です。一般的には、落款やサインがあり、それが本物であるか、共箱(作家本人が作品名や作者名を自著した木箱)があるか、製作年代と技法に矛盾はないか、相応の経年変化が見て取れるか、といったことが真贋を確かめるチェックポイントですが、巧妙に真似られた落款やサイン、共箱そのものが贋作であるといった凝った手口もあります。真贋は目利きに鑑定してもらうことが最も確実です。
[4] 骨董品買取のプロに査定してもらう重要性
骨董品は大きな流通市場があり、骨董品の買取専門店に所属する目利きが集まって頻繁に情報交換や売買をしています。贋作についても、どういうものが出回っているのか、目利きは過去から現在に至るまで贋作に関する豊富な情報を持っているので、真贋に不安がある時は頼りになる存在です。また、真贋以外にも手持ちの骨董品にどれほどの価値があるのかを知るには目利きに査定してもらうのが一番。不用品の回収・処分を行っている業者には「骨董品は査定して買い取ります」と謳っているところもありますが、不用品回収事業をメインとしているので骨董品や美術品の目利きが査定を行っているところはまずありません。査定額が低くなってしまうのでせっかくの骨董品が低評価になって損をしてしまいます。
[5] 適正価格で買取してもらうための注意点
遺品のなかにあった骨董品を適正な価格で買取してもらうためには、不用品買取業者や貴金属の買取業者ではなく、骨董品や美術品の専門買取店を選ぶことが大切です。美術品の査定は豊富な知識と経験がなければできません。査定は誰がしても同じというものではないので実績の豊富な買取店を選ぶことが重要です。ホームページに掲載されている買取実績を見て高額良品を買取していることを確かめてください。また遺品の処分については故人の尊厳を守り、高い専門知識とモラルをもって買取や不用品整理に当たる「遺品整理士」の資格者を擁する買取店もあります。買取店を選ぶ際の一つの判断基準になります。
担当
骨董買取コラム編集室
骨董目利き修行者
将来、古美術商になるため古美術永澤で修行中。愛読書は廣田不孤斎の歩いた道。