相見積もりの極意 -古美術商が教える、後で後悔しないためのコツ-

実家整理遺品買取・整理 2025.11.05

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古美術品を手放す際、「相見積もり(あいみつ)」を取ろうと考える方は多いと思います。
複数の業者に査定を依頼し、提示された金額や対応を比較して検討することは、売却するうえで非常に有効な手段のひとつです。実際、当社にも相見積もりを前提としたお客様からのご相談を頂戴する機会がございます。
しかし、一見すると合理的なやり方でも、相見積もりを依頼した結果、思わぬトラブルを抱え悩まれるお客様もいらっしゃいます。
今日は、古美術商として30年以上の実績がある当社の経験から、上手に相見積もりを取るためのポイントをご紹介します。

●相見積もりのメリットとデメリット

相見積もりの最大のメリットは、やはり価格の相場を把握できることです。
査定額を比較することで、どの程度の評価が妥当かを知る手がかりになります。
また、業者にもそれぞれ得意な分野がございます。洋食器は高額買取してくれるけれど、掛け軸への評価は低い…といった事態も有り得ますので、特にまとまった数の品を売却する際は、
古美術への幅広い知識を持ち、公正な査定額を提示してくれる業者選定が肝要となります。

一方で、デメリットも存在します。
査定を依頼する業者が増えるほど、対応や連絡の手間が増すため、それだけでも意外と負担が大きかったと口にされるお客様を多くお見かけします。
中には、連日のように電話や宣伝メールを送ってくる業者もあるようです。
特に高齢で単身住まいのお客様は、自宅住所を伝えてしまったから、断るとリスクがあるのではと不安を抱かれ、出張見積もりでお伺いした当社の査定士に、「他社にどうやって断れば良いでしょうか?」とご相談頂くケースがございます。お客様の不安そうなご様子を拝見するたびに、私どもも胸が痛みます。

●老舗古美術商が感じる「相見積もり」の難しさ

お客様だけでなく、私たち買取に携わる立場にもさまざまな悩ましさがあります。
昨今は査定方法も多様になり、以前と比べて相見積もりは取りやすい環境が整ってきました。
しかし業者側も、「このお客様は本気で売却を考えているのか」「比較だけなのか」等、判断がつかず、対応に悩むことが少なくありません。また、相見積もりを出すための人的・時間的コストを少しでも回収しようと、自ずと必死になってしまいます。
お客様に過度な連絡攻勢をかけ、ご迷惑をお掛けするのは言語道断ですが、一方で、便利さと引き換えに軽い気持ちで何社にも依頼してしまうと、想定外の苦労が生じてしまいます。
相見積もりを取る際は、売買に関わる全員が気持ち良く取引できるよう、ぜひ次のステップを確認してみてください。

●上手な相見積もりを取るための3ステップ

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ステップ1:「相見積もりです」と事前に伝える

相見積もりを行う際は、依頼先をむやみに増やさず、信頼できそうな2〜3社に絞るのがおすすめです。また、連絡時には「相見積もりを前提とした査定依頼である」とはっきりお伝えください。 この意思表示をするだけで、相手業者は「自社に決まった案件ではない=断られる可能性がある」と想定できるため、断りやすい空気を事前に醸成できます。また、業者にとってどうしても欲しい品があった場合は、競合相手に買われまいと、頑張って評価額をアップしてくれるかもしれません。

ステップ2:同じ画像、同じ品物で評価してもらう

相見積もりを取る際は、必ず同じ条件で査定を依頼することが大切です。
・同じ品物であるにも関わらず、業者ごとに撮影する画像や内容を変えてしまう
(例)撮影画像の角度がバラバラ/共箱や保証書の画像を付けたり、付けなかったりする等
・画像の送付枚数が業者によって極端に異なる
・査定してもらう品物そのものや数量が統一されていない
このような状態では、業者ごとに判断基準がばらつき、正確な比較ができません。
条件を統一することで、提示金額の差に各社の「見る目の違い」が明確になり、より公平な比較検討が可能になります。

ステップ3:買取会社が決まったら、速やかに&他社へ必ず連絡を!

断るのが気まずいからと、売却を見送った会社への連絡を怠り続けると、業者側としては「一体いつ売ってくれるのだろう?」と判断に悩み、結果的に何度も問い合わせる事態を招き、双方にとってマイナスとなってしまいます。業者といえども人間ですので、短い言葉で十分ですから、なるべく早めにお断りの一報を入れましょう。
「家族と話し合って他社に決めた」とか、「他と良いご縁が生まれた」と伝えるだけで、互いが気持ちよく取引を終えられます。

●信頼を軸にした取引を

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近年は生前整理や遺品整理でご相談を頂く機会が増えました。長年大切にされてきたものや、故人の形見ともいえる品を手放す時、評価額の高さだけで納得ができるほど、人情は単純なものではありません。
古美術品には、創作した作家の情熱、長年保管されてきた方の想いなど、多くの人間の“気持ち”と思い出が詰まっています。そのような品を託す相手は、自然と信頼できる人が良いと考えるはずです。
価格はもちろん大切ですが、査定の過程で、品物に対する姿勢や説明の丁寧さ、誠実さを感じ取り、「この人になら任せても大丈夫」と思えたら、それが最良の選択といえるでしょう。
相見積もりを上手に活用しながら、最後は信頼を軸に、納得のいく取引を目指していただければと思います。

●まとめ

相見積もりは、正しく使えば心強い味方になります。
比較のための手段ではなく、「信頼できる人と出会うためのプロセス」だと捉えてみれば、
最終的に選ぶ業者がどこであっても、「お願いして良かった」と思える結果が待っていることでしょう。