掛け軸の買取価格はどう決まる? 査定のポイントをプロが解説

掛け軸買取骨董品買取 2025.06.12

[1] 掛け軸の買取価格は何で決まる?

そもそも掛け軸にはどんなジャンルがある?

日本の掛け軸は6世紀末から大化の改新に至る飛鳥時代に中国から仏画とともに伝来したものです。もともとは仏教の普及を目的としたものでした。それが日本で独自の発展を遂げ、書や画などを美術品として楽しむためのものとなり床の間に飾られました。しばしば描かれる龍や虎、老人と山水などは、美術品であると同時に運気を高め、家を守るもの、あるいは長寿を願うものという意味も持っています。

掛け軸の中心となるのはいうまでもなく本紙と呼ばれる作品そのものです。絹を素材としたもの(絹本)、紙を素材としたもの(紙本)の2種類があり、掛け軸の価値を決めるのはこの部分です。ただし、インテリアとして楽しむ西洋絵画にとって額縁の装飾が重要であるように、掛け軸も、本紙を挟むように上下に渡された一文字と呼ばれる細い帯や下地となる中廻し(ちゅうまわし)、中廻しの上に伸びる細長い2本の帯状の風帯(ふうたい)、さらには一番下に仕込まれている軸棒やそれが左右に少し飛び出した軸先と呼ばれる部分も作品を引き立てる重要な要素です。細部の美しさや“格”にこだわる日本独特の世界でもあり、作品に付随するものとしてこれらの部分の素材や趣向も掛け軸の価値を左右する要素になります。

掛け軸に使われている作品は、書と画、さらに画とその余白に文字で評言を加えた画賛と呼ばれるものがあります。中国の掛け軸で始まったものです。「賛」と呼ばれる文字部分は鑑賞者による褒め言葉ですが、作者自身のこともあり、今も用いられている「自画自賛」の語源にもなっています。

いずれにしても、掛け軸の価値を左右するのは本紙の作品であり、それは一般の絵画などと同様に作家の知名度や画壇・書壇での地位によって大きく左右されます。

掛け軸の作品のジャンルには「山水画」「花鳥画」「人物画」「仏画」「書」などがあります。花鳥画は文字通り花や鳥、小動物を描いたもので、季節感が表現できるだけでなく、花ならではの鮮やかな彩りを再現したり、鳥や小動物の姿態を精緻に表現できることから人気のある絵柄です。また、山水画は岩山や滝、樹木といった自然の風景を描いたもので、中国の唐代に確立した墨の濃淡だけで描く水墨画の題材としてもよく使われています。もちろん彩色を施した美しい山水画もあります。「人物画」では、舞妓や江戸美人画などが代表的です。また「仏画」では阿弥陀如来や観音像、不動明王、達磨大師などが好んで描かれています。

さらに絵画ではなく書の掛け軸があります。茶室に禅宗の高僧が描いた墨蹟を飾ったことから、その後、一般の床の間に、漢詩の一節を引いたものなど禅語を離れたさまざまな書が掛けられるようになりました。

作家の知名度

掛け軸の価値を左右するのは作品の出来映えです。特に高価で流通している著名な作家としては、まず狩野派の作家のものが上げられます。狩野派は室町時代の第8代将軍足利義政の御用絵師になった狩野正信が御用絵師として取り立てられたことに始まる絵画集団。狩野元信や狩野永徳、狩野山楽、狩野山雪、狩野探幽などが知られ、信長、秀吉にも重用され、力強い筆致と豊かな装飾性を特徴としながら江戸時代末期まで日本の美術界に君臨しました。また桃山時代には狩野派の他にも長谷川等伯、海北友松などの画家も活躍しています。さらに江戸時代の後期には円山応挙が日本画にリアルな写生の技法を持ち込み、それまでの日本の絵画にはない写実性と装飾性が一つになった新たな画境を開きました。特に犬や兎、鶴、孔雀、虎などの動物や昆虫類などを精緻に描いた作品がよく知られています。また応挙の高弟、長沢芦雪も奇抜な着想と大胆な構図で知られ、時にユーモラスな表現はモダンアートにも通じる魅力を備えています。同時代の伊藤若冲も動物や植物をモチーフに、緻密な描写と鮮やかな色彩、大胆な構図で描いた画家で、近年急速に人気を高めています。その他、明治期から長く活躍し、端正な女性の姿を描いた上村松園や鏑木清方の作品も高額で取引されているものの一つです。

保存状態とシミ・虫食いの有無

湿度の高い日本はカビが生えやすく絵画などの保存には神経を使います。しかも掛け軸は和紙や絹が用いられており、また、風通しの良くない押入などに巻かれた状態で保管されるので、カビやシミ、虫食い、変色などの傷みが出ることが少なくありません。中廻しや柱、さらにはその上下の天や地の部分にわずかな傷みがある程度であれば、それほど影響はありませんが、作品そのものにこうした傷みがあれば当然価値は大きく下がってしまいます。

箱・付属品の有無

掛け軸の査定価格を左右するものとして箱などの付属品の有無やその状態は大きな意味を持っています。特に掛け軸を収める専用の箱である共箱の有無は重要なポイントです。共箱は作者自身が自筆で画題を描き、署名をしているものが多いため作品の保証書のような存在ともいえます。仮に作品の状態があまり良くなくても、共箱があれば作品の真性が証明されます。また共箱ではなく一般的な桐の箱に収められているものでも鑑定書などがあれば高い評価を得ることができます。

 

[2] 査定時に見るポイントとは?

落款や署名の確認

掛け軸は市場に出回っている数が多く、また模写や贋造品も非常に多いことから、まず真贋の鑑定が行われます。その際にチェックされるのが署名や落款の有無です。一般的には作品の左下や右下に記されていますが、その作家独特の書体や印章によるものなので、真贋判定の大きな手掛かりになります。実はこれ自身が偽造されていることも多く、慎重な判定が行われます。また、中国の掛け軸の落款印は、それも作品の一部と考えられ、落款印そのものに価値があると考えられています。また作者だけでなく所有者の落款印が押されていることがありますが、これも中国掛け軸独特のもので、誰が所有していたものかが分かり、それが作品の信用や価値を高めることにつながっています。

真贋の判定方法

署名や落款以外の真贋の判定要素としては、作品に表れた作家独特の表現や筆遣いなどが詳細に吟味されます。作家独自の制作技法と制作年代の一致も大きなチェックポイントです。作家は年代によって題材や技法を変えることが多く、示されている制作年代と技法の不一致などがあれば贋作の疑いが濃いということになります。また中廻しや一文字に使われている裂の素材や状態などが制作年代との関係で妥当であるかどうかも、鑑定にあたっての重要な情報になります。

いずれにしても、大量に市場に出ている掛け軸の真贋を素人が判定することは不可能です。精巧な贋作はプロでも見過ごすことがあるといわれるほど緻密で、真贋の鑑定を含め買取査定は専門家に任せることが必要です。作家は誰か、題材は何か、国内のものか中国のものかなどによって得意とする骨董品買取店も異なってきます。ホームページなどで買取店の得意分野や得意な作家、買取を強化している分野などを確認した上で、専門性にあった店に査定依頼をすることが大切です。掛け軸の査定は買取店の査定士の腕次第です。

買取専門店の古美術永澤は、掛け軸の目利きが在籍しており、これまでに多数の掛軸を取り扱っております。お手元の掛け軸の本当の価値を知りたい方、作家不明や中国作家も得意としておりますので、お気軽にご相談ください。

掛け軸買取はこちら >

LINE査定はこちら >

担当

骨董品買取コラム編集室

骨董目利き修行者

将来、古美術商になるため古美術永澤で修行中。愛読書は廣田不孤斎の歩いた道。