- 中国美術
作品の査定・評価について
何朝宗の作品を高く評価しております。
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何朝宗(か・ちょうそう、1522-1600年)は、中国・明代を代表する徳化白磁(とっかはくじ)の名匠・彫刻家であり、とりわけ仏教彫塑の分野において不朽の評価を受ける人物です。今日、世界の主要美術館に所蔵される徳化白磁仏像の多くは、彼の様式、もしくは彼の影響下で生み出されたものと考えられており、「徳化白磁=何朝宗」というイメージを確立した存在とも言えます。何朝宗は福建省徳化県潯中鎮隆泰後所村に生まれました。徳化は古くから磁器生産で知られる土地で、特に白磁は「象牙のような白さ」と称される独特の美しさを持っています。彼の家系は、もともと仏像制作に携わる技術を有しており、何朝宗は幼少期から仏像彫塑の伝統的な技法に親しんで育ちました。この環境が、後の芸術形成に決定的な影響を与えたと考えられています。
やがて何朝宗は、木彫や塑像の感覚を磁器という素材に応用することに注力し、陶磁彫塑を専門とする道を選びました。彼の最大の特徴は、徳化白磁の純度の高い白さを最大限に活かしながら、人物像にきわめて人間的で柔らかな表情と肉感を与えた点にあります。当時の磁器仏像は、形式化された表現に陥りがちでしたが、何朝宗の作品では、衣文の流れ、指先の動き、顔の微妙な起伏に至るまで、彫刻的な生命感が感じられます。
制作技法の面でも、彼は極めて高度な工夫を凝らしました。徳化白磁を用い、「捏(ねる)」「塑(かたどる)」「雕(彫る)」「刻(刻む)」「刮(削ぐ)」「削(そぐ)」「接(継ぐ)」「貼(貼る)」といった複数の工程を組み合わせることで、磁器でありながら彫刻作品に匹敵する立体表現を実現しています。焼成後の歪みや破損のリスクが高い磁器塑像において、これほど完成度の高い造形を安定して生み出した点は、技術的にも驚異的です。
題材としては、観音菩薩、達磨大師、羅漢など、仏教的モチーフが中心でした。特に観音像は、慈悲深さと静謐さを併せ持つ表情が高く評価され、徳化白磁観音の典型像を確立したとされています。これらの作品の多くには「何朝宗印」と刻まれた款識があり、瓢箪形や方形の印が用いられました。この署名の存在は、当時すでに彼が作者として強く意識され、ブランド的な価値を持っていたことを示しています。
何朝宗の作品は、中国国内だけでなく、海上シルクロードを通じて日本や東南アジア、さらにはヨーロッパへも渡りました。16~17世紀、徳化白磁はヨーロッパで「ブラン・ド・シーヌ(Blanc de Chine)」と呼ばれ、珍重されますが、その評価の基盤を築いたのが、まさに何朝宗の芸術でした。静謐で気品ある白磁仏像は、異文化圏においても宗教美術や鑑賞用美術として高く受け入れられたのです。
彼の生涯については、清代に編纂された乾隆年間の『晋江県志』や、道光年間の『福建通志』などに記録が残されており、後世においても重要な芸術家として位置づけられてきました。現在でも徳化には何朝宗の旧居跡が伝えられ、また永春県の古徳院などには、彼に関連するとされる仏像遺跡が残っています。
総じて何朝宗は、徳化白磁を単なる工芸品の域から、高度な精神性と造形美を備えた芸術作品へと押し上げた人物です。その影響は後代の徳化窯に連綿と受け継がれ、「何派」と呼ばれる様式として体系化されました。今日、何朝宗の名は、中国陶磁史のみならず、世界陶芸史においても欠かすことのできない存在として、確固たる地位を占めています。
何朝宗の代表的な作品
- 観音菩薩像(徳化白磁観音)
- 達磨大師像(白磁達磨)
- 羅漢像(白磁羅漢)
買取実績
お買取りさせていただいた何朝宗の作品です。





