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作品の査定・評価について
並河靖之の作品を高く評価しております。
もし作品がお手元にございましたらぜひご相談ください。

1845年2月9日武蔵国川越藩(埼玉県)藩士高岡九郎右衛門の3男として京都柳馬場に生まれる。本姓は高岡。1855年に青蓮院宮侍臣並河靖全の養子となり、家業を受け継いで自らが青蓮宮(後の久邇宮朝彦親王)侍臣となる。
並河靖之の七宝制作の契機には諸説あり、1872年尾張の桃井儀三郎英升と図って京都で七宝製作を始めるが、その技術は濤川惣助の家職人から学んだという説がある。
1873年ごろから桐村茂三郎と10円ずつ出しあって資本金とし、七宝制作所を起こす。1875年には京都博覧会に作品を出品して銅賞を受賞。その後は西洋の博覧会に積極的に出品するようになり、1876年フィラデルフィア万博で銅賞牌、1877年の第1回内国勧業博覧会で鳳紋賞牌、1878年のパリ万博で銀賞を受賞する。
また、1879年に京都府の博覧会品評人、1881年には画学校御用掛を務めるなどキャリアを重ねる。しかし、ストロン商会から品質が悪く買い手がつかないとの理由で契約を破棄。靖之の面目は丸潰れとなる。一方で気の毒に思ったストロン協会は靖之に勉強させるために、同年東京で開かれた第2回内国勧業博覧会に連れ出した。靖之はここで尾張七宝の質の高さを目のあたりにし自分が井の中の蛙だったことを痛感。京都に戻ると直ちに職人を約半分に減らして事業を縮小する。
挫折を味わい更に技術を磨きをかけ、再び軌道に乗せることに成功。その後三条白川一帯は七宝業者が20数軒林立し、靖之は彼らと切磋琢磨した。靖之は、下絵担当で工場長を務めた中原哲泉ら優秀な工人を育て、釉薬にも研究を重ねる。その結果、明度や彩度がある艷やかで潤いある多彩な色彩を獲得した。細緻な線置きによる精巧な文様表現による日本画的な作風を評価され、1889年のパリ万博、1900年のパリ万博等で数々の賞を受賞。
高い技量が認められて1896年に帝室技芸員に任命された。七宝の分野で帝室技芸員に任命されたのは靖之と濤川惣助の2人だけである。
その後も活躍をみせ、1927年5月28日に動脈硬化症により死去。享年83。
並河靖之の作品は、梶常吉の系譜を引く伝統的な有線七宝の技術を基本とし、鉱物の分量や配合の割合、焼成する際の時間や温度について気の遠くなるような試行錯誤を重ねた。それにより多くの色彩や色彩のグラデーションを作り上げ、黒色透明釉の発明によりそれまでの七宝作品では存在しなった透明感のある深い黒が出せるようになり、背景色としてよく使われた。
年表
1845年 武蔵国川越藩に生まれる
1855年 青蓮院宮侍臣並河靖全の養子となる
1858年 元服し、名を主税と改め、諱を靖之と定める
1872年 尾張の桃井儀三郎英升と図って京都で七宝製作を始める
1875年 第4回京都博覧会に七宝花瓶を出品 有功銅賞受賞
1876年 横浜のストロン商会と5年間の契約を結ぶ
フィラデルフィア万国博覧会に出品 銅賞受賞
1877年 第1回内国勧業博覧会で鳳紋賞牌
1878年 パリ万国博覧会に銀製七宝茶入を出品 銀賞受賞
1879年 京都府の博覧会品評人
1881年 第2回内国勧業博覧会に銅器七宝花瓶を出品 有功二等賞受賞
1888年 バルセロナ万国博覧会に出品 銀賞受賞
1889年 日本美術協会会員となる
1890年 京都美術協会発足 評議員となる
1896年 帝室技芸員となる
1900年 パリ万国博覧会に四季花鳥図花瓶を出品 金賞受賞
1904年 セントルイス万国博覧会に出品 金賞受賞
1906年 勲章工場を東京下谷上根岸に設ける
1910年 日英博覧会に出品 名誉賞(金牌)受賞
1923年 七宝工房を閉鎖
1927年 死去
並河靖之の代表作品
七宝四季花鳥図花瓶
1899年(明治32年)に制作され、1900年のパリ万国博覧会に出品された並河靖之の最高傑作のひとつです。明治天皇の御下命により製作され、パリ万博で金牌を受賞しました。黒色透明釉を背景に四季の花々と小鳥が描かれ、釉薬を区画する金属線の太さを変えて筆線に似せるなど、七宝表現の新機軸を打ち出した作品です。現在は皇居三の丸尚蔵館に収蔵されており、令和7年度に重要文化財に指定される予定です。
鳳凰文食籠
1873年(明治6年)12月に完成した並河靖之の処女作です。製作にあたっては、妻の持参金を元手に自分たちの七宝制作所を設立し、苦心の末に完成させました。当初は朝彦親王に献上されましたが、初作品の記念として後に他の作品と交換し、現在は並河靖之七宝記念館に保管されています。初期の作品ながらも並河の才能が垣間見える貴重な作品です。
舞楽図花瓶
1877年(明治10年)の第1回内国勧業博覧会に出品された作品で、他の出品作とともに鳳文賞を受賞しました。舞楽の場面を描いた優美な図柄が特徴で、初期の並河作品の中でも特に技術の高さが窺える作品として知られています。現在は三の丸尚蔵館に収蔵されています。
黒地四季花鳥図花瓶
1900年のパリ万博に出品された後、皇室に買い上げられた名作です。靖之が開発した黒色透明釉薬を背景に使用し、四季の花と鳥の鮮やかな色彩を際立たせています。黒色透明釉は小さな傷や釉薬の乱れも隠せないため、製作には相当な技量が要求される技法です。この作品は現在、三の丸尚蔵館に納められており、「七宝四季花鳥図花瓶」と同様に令和7年度に重要文化財に指定される予定です。
七宝山水楼閣文香炉
大正元年(1912年)に制作され、靖之本人より帝室博物館に寄贈された作品です。大正天皇即位記念として制作されたと推測されています。晩年の並河靖之が手がけた代表作のひとつで、淡い色彩に金の植線で山水画が描かれ、幽玄の世界を表現しています。水墨画のような意匠が特徴で、現在は東京国立博物館に収蔵されています。
その他の並河靖之の代表作リスト
七宝菊唐草文花瓶 | 花鳥文花瓶 | 桜蝶図平皿 | 菊紋付蝶松唐草模様花瓶 | 藤草花文花瓶 |
菊唐草文細首小花瓶 | 蝶に花唐草文香水瓶 | 雲文香合 | 鳳凰草花図飾壺 | 散水楼閣文香炉 |