
昭和戦時期に精工舎(現・セイコーグループ株式会社)によって製造された「百式飛行時計」懐中型をお譲りいただきました。
本品は、旧日本軍で使われていた、いわゆる軍用時計です。盤面6時方向には「飛行時計」の表記がうっすらと残っており、当時の用途を示す貴重な痕跡です。精工舎では戦時中、様々な飛行時計を製造しており、これらはいずれも一般販売されることなく日本陸軍へ納入されていました。そのため、一般市場には出回らず、現存個体も極めて少ない状況です。
特筆すべきは、文字盤および針に残された当時のままのラジウム夜光塗料です。ラジウム夜光は1960年代まで広く採用されており、通常使用においては人体にほとんど影響はありませんが、破損した塗料を口に含んだり粉末を吸引することは避けるべきとされております。現在ではこのようなオリジナル夜光が残った戦時時計は極めて稀少であり、資料的価値を大いに高めています。
また、戦後においては一部の個体が懐中型にケーシングされ、復員兵や関係者の手に渡った事例も報告されています。本品もその一例と考えられ、状態から見ても戦中から戦後を生き延びた実用品でありながら、保存状態が良好な部類に入ります。
戦中の日本製軍用時計の中でも、飛行時計は用途が限定され、数が限られていたため、戦史・時計史双方において価値の高いコレクターズアイテムとして、適正に評価させていただきました。
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