
WALTHAM(ウォルサム)製の懐中時計をお譲りいただきました。アメリカで製造された本体に、英国様式のアルバートチェーンが組み合わされた、実用性と装飾性を兼ね備えた非常に興味深い構成の一品でございます。時計本体は、精緻な機械式ムーブメントを搭載した伝統的なローマ数字ダイヤルを持ち、WALTHAMらしい高精度な造りが印象的です。本品は1900年代初頭に製造された個体であり、当時の懐中時計としては非常に完成度の高い仕様が見受けられます。
さらに注目すべきは、その文字盤外周に設けられた細かな副目盛りで、これは標準的な懐中時計ではほとんど見られない仕様となっており、高精度の時間管理や業務用の計測補助に対応する特別仕様と見受けられます。外周の副目盛りは1分をさらに細かく分割する形で設けられており、鉄道や工業用途において秒単位での計測が求められた時代背景を想起させます。こうした仕様は、一般的な鉄道時計や官給品には見られず、精密な業務に従事していた人物や、技術系の専門職が使用していた可能性も考えられます。加えて、ムーブメントの安定感や針の視認性など、実用的な側面でも完成度が非常に高く、当時の技術の粋が感じられる作りです。
一方で、本品に付属していたチェーンは、英国伝統のアルバートチェーンで構成されており、Tバーとメダル型エンブレムが付いた、贈答や記念品として用いられた形式と類似しています。アメリカ製の時計にこのような英国式の装飾チェーンが組み合わされている構成はあまり一般的ではなく、当時の所有者が実用性のみならず外観の品位にも関心を持っていたことを静かに物語っております。
懐中時計というアイテムが単なる時間計測器ではなく、持ち主の立場や美意識、社会的背景までも語る存在であったことを改めて思わせてくれる逸品です。本体の高精度仕様、英国式の装飾チェーン、そして全体としての完成度の高さを総合的に評価し、資料的・鑑賞的価値の高い時計として拝受いたしました。
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