
スイスの名門時計商、Patek Philippe(パテック・フィリップ)によるアンティーク懐中時計をお譲りいただきました。
金無垢のシンプルなラウンドケースに収められた本品は、実用性と格式を高度に両立させた、19世紀末から20世紀初頭のスイス高級時計文化を代表する作品です。
文字盤には、「PATEK, PHILIPPE & Cie / GENÈVE」というロゴが中央に記されており、現代の同ブランド品とは明確に異なる、歴史的な書体と構成を保っています。
特に注目すべきは、「& Cie」という商号表記で、これは「商会(Compagnie)」を意味するフランス語であり、パテック フィリップ社が法人格を正式に変更する以前、1910年代前半までの間にのみ用いられていた形式です。
さらに、「GENÈVE」の表記下に引かれた控えめな下線や、ロゴ全体の文字間の広さ、均整の取れたバランスは、当時のスイス時計業界におけるレタリングと造形の美意識を物語っています。これらの要素は単なる装飾ではなく、「時計は時間を示す道具であると同時に、芸術品であり、文化を体現する存在である」という理念に基づくものであり、美術工芸品としての懐中時計の在り方を体現するデザインです。
Patek Philippeは1839年の創業以来、ヨーロッパ王室や各国の上層階級に支持され続け、精密な機械構造と格式ある意匠をあわせ持つブランドとして、常に最高峰の地位を築いてきました。本品が製造された頃は同社が「& Cie」の商号のもと、世界博覧会や王室向けの特注時計を多数製作していた時代であり、まさにブランドの象徴的な黄金期にあたります。
この時計もまた、繊細なアラビア数字インデックスやスモールセコンド、ブルースチール針など、当時のドレス仕様を端正にまとめた構成となっており、そのひとつひとつの要素にPatek Philippeならではの品格が宿っています。
希少な「& Cie」ロゴと歴史的レイアウトを備えた本品は、単なる高級時計にとどまらず、19世紀末スイス時計産業の文化的結晶として歴史的価値と鑑賞性を持つ逸品であると判断し、慎重に査定させていただきました。
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