
アメリカ・Hamilton(ハミルトン)社製の航空用軍用懐中時計「4992B G.C.T.」をお譲りいただきました。
漆黒の文字盤に白字の24時間表示を備えた視認性の高い設計は、第二次世界大戦中における米軍航空部隊の作戦行動を支えた、精密機器としての歴史的背景を今に伝える貴重な一本です。
「G.C.T.」とは“Greenwich Civil Time(グリニッジ標準時)”の略であり、当時の航空部隊において世界共通の時刻基準として用いられていました。ローカルタイムに左右されないこの統一時間は、戦略爆撃機や輸送機、航法士・通信士が行動を正確に調整するための要であり、その運用を支えたのが本時計のような「G.C.T.ウォッチ」でした。
搭載されているムーブメント「4992B」は、鉄道時計で名を馳せたHamilton社の「992B」を基にした改良型であり、22石の高精度設計に加えて、ハック機能と24時間表示を備えた航空用仕様となっています。ムーブメントの品質は軍用基準である「6姿勢調整」「温度補正」などをクリアしており、実戦環境における信頼性と耐久性を重視した造りが施されています。
Hamilton Watch Company は、19世紀末からアメリカ・ペンシルベニア州ランカスターを拠点に高精度時計を製造してきた老舗メーカーであり、第二次大戦中には米陸軍・海軍に対し大量の航空時計、マリンクロノメーター、軍用腕時計を供給することで国家的貢献を果たしました。とりわけこの「4992B G.C.T.」モデルは、パイロットやナビゲーターが星による天測航法や航法時間の統一管理を行う際に用いられ、連合軍の空中作戦の中核を担ったとされています。
この時計は、戦争という極限状態の中で時間の正確さが人命と任務遂行に直結する環境下にあって、最も信頼された計器の一つでした。今日においても、この種のGCTウォッチは軍事史・時計史の両面で評価され、特にHamilton製の「4992B」ムーブメントを搭載した個体は、完成度・耐久性・設計思想のすべてにおいて優れているものとして広く知られています。
本品もまた、当時のオリジナル仕様を良好に保ち、視認性・針・目盛ともに鮮明であり、第二次世界大戦の航空作戦を物語る歴史的遺産として、大変貴重な品と判断し、丁寧に評価させていただきました。
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