
安藤七宝の小物入
先日、お客様より、貴重な安藤七宝の小物入れをお譲りいただきました。本品は、安藤七宝店製の美しい小物入れです。蓋の表面を埋め尽くすように描かれた、淡く優しいピンク色の花々と繊細な唐草文様が、見る人の心を惹きつけます。
安藤七宝は、明治時代に日本の伝統工芸である七宝を国際的な芸術品へと高めた功績で知られ、製作された数々の作品は、今日でも高い評価を受けています。その技術は、緻密な線で文様を描き、それぞれの区画に釉薬を施す「有線七宝」と呼ばれる技法を極めたものです。
今回買取させていただいた小物入れも、この有線七宝の精緻な技術が存分に発揮された逸品です。銅や銀の素地に描いた花や唐草の下絵に合わせて細い金属線を立てて輪郭を作り、そこに白、ピンク、そして緑色の釉薬が美しく焼き付けられています。釉薬の透明感と、光の加減で微妙に表情を変える色合いが、七宝ならではの奥深い魅力を醸し出しています。
また、この作品の特筆すべき点は、そのデザイン性にもあります。伝統的な日本の文様でありながら、どこかアール・ヌーヴォーを思わせる柔らかな曲線と、西洋の装飾美術の影響を感じさせる優美な構図が特徴です。これは、当時の安藤七宝が、国内外の博覧会に出品し、西洋美術と交流を深めていた時代背景を物語っています。
小物入れの側面にも、連続文様が丁寧に施されており、作り手の丁寧な仕事ぶりがうかがえます。小さな作品ではありますが、安藤七宝が誇る技術と美意識が凝縮された逸品です。
安藤七宝の作品は、国内外に多くの愛好家が存在し、現在も高い人気を誇っています。
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