
ガンダーラ様式の仏頭像をお譲りいただきました。本像は、古代インドとギリシャ文化が融合したガンダーラ美術の典型を示す尊容であり、写実的で気品ある表情、整えられた波状の髪、そして落ち着いた面持ちが印象的な一作です。
髪の繊細な彫りや額に配された装飾、優しく閉じた口元の表情からは、高い彫刻技術と文化的洗練を感じさせます。とりわけ本像は、通常のガンダーラ仏に多く見られる半眼ではなく、うっすらと目を開いた「開眼相」であることが特筆されます。
この開眼表現は、仏が瞑想中の内観的な状態ではなく、衆生を見守り、慈悲と智慧をもって救済へと働きかける姿勢を示すものとして解釈されます。視線の存在感が強く、まなざしに穏やかな意志が宿っており、生きた仏としての精神的な臨場感を漂わせています。これは、ガンダーラ美術における写実性と宗教性の融合が高度に達した証左であり、現存作例の中でも比較的珍しい意匠に属します。
また、眉の深い彫りや鼻筋の立ち上がり、ふっくらとした頬の表現には、古代ギリシャ・ローマ彫刻の影響が明確に認められ、ガンダーラ特有の文化的交錯を如実に物語っています。
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