
木彫による十一面千手観音菩薩坐像をお譲りいただきました。本像は、衆生救済の象徴として仏教において広く信仰される千手観音の中でも、頭上に十一の化仏を戴いた尊像です。
観音菩薩の顔立ちは穏やかな慈悲相を保ちつつ、開眼の相貌に仕上げられており、静的な瞑想像ではなく、まさに現世の苦悩に即応する応現観音としての性格を強く印象づけております。その視線には、見る者の内面をも見透かすような迫力が込められ、荘厳な中にも親しみのある神性が宿っておりました。
頭上には複数の面が塔状に連なり、それぞれに異なる表情が刻まれております。柔和な慈悲相、憤怒の忿怒相、笑面、そして最上段には如来面が据えられ、十一面観音の教義に基づく構造です。
これは、観音があらゆる方角・すべての衆生の声を聞き分け、苦悩に応じて姿を変えて救済に臨むという思想を表現したものであり、宗教造形として極めて象徴性の高い要素です。
光背は精緻な透かし彫りによって装飾され、仏像全体の背面に華やかさと気高さを添えています。衣には細やかな金彩が残存し、柔らかな衣文の流れと相まって、静と動を同時に感じさせる優美な仕上がりです。
十一面と千手、そして開眼という三要素が重なることで、本像は信仰対象としても極めて意義深い造形作品であると判断いたしました。
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