
このたびは、チベット仏教美術の香りを色濃く残す観音菩薩像をお譲りいただきました。全体的に縦長のプロポーションが印象的で、仏教彫刻としても一風変わった様式美を湛えた貴重なお品でした。
本像は、頭上に小さな仏像を載せた造形が特徴的で、この小仏は「化仏(けぶつ)」と呼ばれる阿弥陀如来を表しています。観音菩薩が阿弥陀如来の化身であることを象徴するこの意匠は、古来よりチベットや東アジア密教圏で広く尊ばれてきた要素であり、尊格を明示する重要な造形的記号です。
顔立ちは非常に面長で、目は切れ長、鼻筋や輪郭は直線的に造形されており、写実よりも精神性を重視した宗教的デフォルメが顕著に現れています。このような直線を基調とした縦長のスタイルは、内面的な慈悲を体現する意匠として高く評価されます。
衣文には花文様の装飾が施されており、これは天衣の一部として菩薩の神聖性や装飾性を高める役割を果たしています。
このように、単なる装飾品としてではなく、信仰の対象として真摯に制作されたことが伝わる仏像は、近年ますます評価が高まりつつあります。
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