
地蔵菩薩坐像をお譲りいただきました。剃髪の頭部に穏やかな慈悲相をたたえ、静かに坐す姿は、地蔵本来の柔和な存在感を的確に表現しており、大変味わい深い一体です。
本像は右手に丸い宝珠を掲げています。地蔵菩薩の像容では、通常は左手に宝珠、右手に錫杖を持つのが通例とされますが、本像ではその構成が逆転し、右手に宝珠を持つという珍しい造形が採用されています。石造による浅彫りの仏像でありながら、宝珠の形状は明確に浮かび上がっており、像主の慈悲と救済の力が静かに強調されています。
このような構成は、地方における民間信仰や簡略仏の文脈に見られる独自の信仰表現であり、定型から外れた像であるからこそ、当時の礼拝者たちの個人的な願いや祈りが込められていたことがうかがえます。摩耗しつつも柔らかく残る衣文や、静かに前を見つめる表情からは、長く人々に寄り添ってきた存在としての風格がにじみ出ています。
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