
彫刻 硯
先日、お客様よりお譲りいただいた貴重な硯についてご紹介いたします。
蓋には、饕餮(とうてつ)文様が彫刻されており、その技法は非常に精密で立体感に富んでいます。饕餮は古代中国の青銅器などにも見られる怪獣文様で、大きな目、鼻梁、、誇張された眉や口などで表現されます。怪異で威厳ある姿は、魔除け・権威の象徴とされ、特に礼器や文房具などにも用いられました。この硯では、特徴的な大きな目と口を持つ獣面が力強く表現されており、職人の高い技術力を物語っています。
石材は灰色系の色調を呈し、きめ細かな質感が特徴的です。硯池の部分は滑らかに研磨されており、実用性と美術性を兼ね備えた逸品といえます。
硯の歴史は古く、中国では漢代には既に使用されていたとされています。特に宋代以降、文人文化の発達とともに硯は単なる実用品から芸術品へと昇華していきました。名工による硯は「文房四宝」の一つとして珍重され、書斎を飾る重要なアイテムとなったのです。日本へは遣唐使によってもたらされ、平安時代以降、貴族や僧侶の間で重宝されるようになりました。
硯の査定で重要なのは、まず石材の質と産地の特定です。中国四大名硯など、産地により石質や特徴が大きく異なり、それが価値を左右します。次に彫刻技法と文様の精緻さを観察します。龍や鳳凰、花鳥などの伝統的な意匠がどれほど巧みに表現されているか、立体感や細部の仕上がりが査定の重要なポイントとなります。
また、硯面の平滑性や墨の摺り心地といった実用性も考慮されます。さらに、時代性を示す様式的特徴や、銘文の有無、保存状態なども総合的に評価いたします。木箱などの付属品がある場合は、それらの状態や由来も査定に影響を与える要素となります。
古美術永澤では、このような硯をはじめとする書道具全般について、専門知識を持つ査定士が丁寧に評価させていただいております。お手元に眠っている硯がございましたら、ぜひ一度ご相談ください。
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