
植木鉢
この度、お客様より、格調高い植木鉢をお譲りいただきました。
まず目を引くのは、緻密に描き込まれた梅の文様です。ふっくらとした花びらには立体感があり、その中心には金彩が施されています。特に、金彩と白磁の対比が非常に美しく、梅の花が闇夜に浮かび上がるような幻想的な趣を醸し出しています。また、花と花の間に散りばめられた小さな金彩の葉は、梅の枝ぶりを彷彿とさせ、奥行きを与えています。
次に、注目すべきは三つ足の意匠です。植木鉢や器に三つ足が付けられるのは、古くから見られる形式で、安定性を高めるだけでなく、装飾的な意味合いも持ちます。このお品物の場合、足先が獣の足のような形状をしていることから、「獣足(じゅうそく)」と呼ばれる意匠であることがわかります。特に足の部分に赤みを帯びた釉薬が使われています。
これらの特徴から、この植木鉢は明治時代から大正時代にかけて作られた、九谷焼と見られます。当時、九谷焼は海外で非常に人気を博し、ヨーロッパやアメリカ向けに様々な陶磁器が制作されました。その中でも、このように金彩を多用し、緻密な絵付けが施された作品は、高い技術力を持つ職人によって作られた、高級品であったことがうかがえます。
現代においても、この手の九谷焼の作品は、骨董品市場でも評価されています。今回のお品は、上部の口縁部に施された朱色と、白磁、そして金彩の組み合わせは、九谷焼の伝統的な美意識と西洋的な華やかさが融合した独特の雰囲気を作り出しており、美術品としての価値も高いと評価いたしました。
この植木鉢は、園芸用品ではなく、当時の日本の陶磁器技術の粋を集めた、まさしく「動く美術品」ですお譲りいただいたこの貴重な作品は、次に大切にしてくださる方の元へとお繋ぎできるよう、精一杯努めさせていただきます。この度は、数ある古美術買取店の中から私ども古美術永澤をお選びいただき、誠にありがとうございました。
関連買取実績
-
2025.08.28
-
2025.08.27
-
2025.08.26
-
2025.08.26