
伊藤東彦(いとう もとひこ)の布目草花文 蓋物
この度、笠間焼を代表する陶芸家、伊藤東彦(いとう もとひこ)の「布目草花文 蓋物」をお譲りいただきました。
伊藤東彦の代名詞ともいえる布目技法が全面に施された素朴で温かみのある肌合いに、力強くも愛らしい草花文が描かれた蓋物です。六角形の器形と、蓋の愛嬌あるデザインは、初期のオブジェのような抽象的な作風から、自然のモチーフを取り入れた後期への変遷を感じさせます。
伊藤東彦氏は1939年生まれ、東京藝術大学大学院で陶芸を専攻し、笠間にて独立。初期は抽象的な作品も制作しましたが、1970年代半ば頃からは、土の表面に布の質感を写し取る「布目」という独自技法を確立しました。この技法は、土味を活かしつつ、作品に繊細で柔らかな表情を与えるのが特徴です。
その布目の上に、蓮や山百合、葛など身近な草花を、時に大胆に、時にユーモラスに描き入れることで、独自の詩情豊かな世界を表現してきました。1984年には日本伝統工芸展で朝日新聞社賞を受賞、1999年には紫綬褒章を受章するなど、現代陶芸界において確固たる地位を築いています。
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