
清末民初の巨匠・呉昌碩による「紅梅と奇石」の掛軸です。呉昌碩は書・画・印を兼ね備えた「三絶」の芸術家として名高く、中国近代絵画において最も重要な存在のひとりとされています。
本作は、枝一面に咲き誇る紅梅と大きな奇石を組み合わせた構図をとり、文人趣味の精神性を色濃く表現しています。力強い墨線で描かれた梅の幹は篆書(※てんしょ:中国の漢字書体の最も古いもの。呉昌碩は篆刻の大家であり、篆書体の力強い筆意をそのまま絵画や書に取り入れました)を思わせる重厚な筆致で、その枝先に紅色の花が点じられることで、冬の厳しさと春の喜びが共存する趣を生み出しています。
下部に描かれた奇石は、太湖石を思わせる文人石の造形であり、墨の濃淡を巧みに用いて立体感と質感が表現されています。梅の花と石をあわせることで、高潔さや気節とともに、風雅を尊ぶ文人の美意識を象徴しています。呉昌碩が好んだ「金石入画」の精神が如実に感じられる一点といえるでしょう。
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