
清末民初の巨匠・呉昌碩による扇面画(せんめんが)です。呉昌碩は書・画・印の三絶を兼ね備えた文人画家として名高く、その作品は中国近代絵画史において極めて重要な位置を占めています。
本作は折り畳み扇子の形をした「扇面画」に描かれており、文人画家にとって詩・書・画を一体化させる格好の場として多用された形式です。限られた小画面の中に山水と竹林を収めることで、凝縮された文人の理想世界を表現しています。
画面に描かれた竹は、「歳寒三友(松・竹・梅)」の一つに数えられる伝統的な文人の画題です。竹は節操や気節の象徴であり、四季を通じて青々と茂ることから、高潔な人格の比喩ともされてきました。墨の濃淡を巧みに使い分けて描かれた竹林は、呉昌碩特有の力強さと潤いを備えており、清雅な気韻を漂わせています。
また、上部に書き込まれた題詩は、画面に文学的な深みを添えるだけでなく、墨竹の造形と響き合い、まさに詩・書・画三位一体の境地を示しています。この一体化は呉昌碩芸術の真骨頂であり、文人精神の表れといえます。
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