
清末民初の巨匠である呉昌碩による紅梅の掛軸です。呉昌碩は書・画・印を兼ね備えた「三絶」の芸術家として広く知られ、近代文人画の流れを代表する存在です。
本作に描かれているのは、冬の寒さの中に凛として咲く紅梅です。梅は古来より「歳寒三友」のひとつに数えられ、厳冬に花を開くことから「高潔」「忍耐」「不屈の精神」を象徴してきました。その精神的象徴性が、画面全体に力強い気韻を与えています。
特に本作は白梅ではなく紅梅を主題としている点に特徴があります。白梅が清雅や清廉を表すのに対し、紅梅は華やかさや生命力を強調する花とされ、春の訪れを鮮烈に印象づけます。濃淡のある紅色が枝先に点じられ、墨の幹との強い対比が、冬から春への移ろいを象徴的に描き出しています。
呉昌碩は菊や牡丹など数々の花卉を得意としましたが、中でも梅は生涯を通じて最も多く手がけた主題のひとつでした。特に晩年には、梅花図に篆書や篆刻の造形感覚を取り入れ、筆線に金石的な力強さを宿らせています。本作もまた、その旺盛な表現力と豊かな彩色感覚がよく示された一幅です。
関連買取実績
-
2025.09.04
-
2025.09.01
-
2025.08.21
-
2025.08.08