
中世イスラーム世界において流通していた銀貨「ディルハム」を買取らせていただきました。本品は、アッバース朝またはその周辺王朝の時代に鋳造された可能性があり、イスラーム貨幣史において重要な位置を占める品です。両面に美しいアラビア書体の銘文がびっしりと刻まれています。
片面には、中央にカリフや鋳造年・地名に関する文字が大きく配され、その周囲に信仰告白文(シャハーダ)やクルアーンの一節と思われる銘文が環状に施されています。もう一方の面にも同様に緻密な文字配列が見られ、信仰と政治の結びつきを強調する中世イスラーム貨幣の特徴がよく表れています。
素材は銀で、表面には酸化や微細な摩耗が見られるものの、彫刻の輪郭や文字の可読性は比較的良好です。全体として薄く平たい円盤状で、中東・中央アジア地域で流通した典型的なディルハムの形式を示しています。
イスラーム銀貨は、肖像や図像を排し、書体美を重視した文化的特徴を備えており、当時の宗教的価値観や政治体制を反映する貴重な資料とされています。本品もその伝統に則った造形であり、文字の密度や構成から高い鋳造技術がうかがえます。
学術的にも美術的にも価値ある一枚として評価させていただきました。
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