
ヘレニズム時代の王朝であるセレウコス朝シリアで鋳造されたと考えられる銀貨を買取らせていただきました。本品は、紀元前2世紀頃に発行されたテトラドラクマであり、当時の王権と都市文化の象徴として流通していたものと推定されます。
片面には、ギリシャ神話に登場する筋骨隆々としたアポロが弓と矢を持った姿で刻まれており、左側に「ΑΝΤΙΟΧΟΥ(アンティオコス)」の文字がはっきりと確認できます。このことから、セレウコス朝のアンティオコス王(特にアンティオコスIV世またはその近縁王)の治世に発行されたコインと思われます。
もう一方の面には、ギリシャ風の若き男性の横顔が丁寧に刻まれており、王自身の肖像とされます。頭部には月桂冠や王冠のような意匠も見られ、王権を象徴する表現です。髪の流れや表情の柔らかさなど、彫刻技術の高さがうかがえる細部までよく残っています。
コインは銀製で、縁に一部欠けが見られるものの、全体としては図像・銘文ともに良好な保存状態にあります。摩耗や酸化もありますが、文字や肖像の判別が可能であり、歴史的価値を十分に保持しています。
セレウコス朝はアレクサンドロス大王の後継国家のひとつであり、その貨幣はギリシャ文化とオリエント的要素を融合した造形美で知られています。本品もその系譜を物語る貴重な資料であり、美術的・考古学的観点から高く評価できるコレクションアイテムです。
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