
ユダヤ民族がローマ帝国に対して最後の武装蜂起を行った「バル・コホバの反乱」(西暦132〜135年)に関連する、貴重なテトラドラクマ銀貨をお譲りいただきました。本品は反乱3年目に鋳造されたとされ、歴史的・宗教的に非常に高い意義を持つコインです。
片面には、ナツメヤシの葉と果実の束が堂々と刻まれており、その左右には古代ヘブライ文字で「シモン(שמעון)」の銘が読み取れます。これは反乱軍の指導者であり、独立政権の名目上の首長であったシモン・バル・コホバ(バル・コクバ)を示しており、彼のもとでの独立国家意識を象徴する銘文です。
もう一面には、六本柱構造の神殿の正面ファサードが意匠化され、両脇には「イスラエルの自由のために」といった意味の古代ヘブライ語が刻まれています。屋根上の星状の文様は神殿再建の祈願を象徴しているとされ、ローマによって破壊された第二神殿の再興を念頭に置いた意匠であることがわかります。
このコインは、既存のローマ銀貨を用い、その上から新たな意匠を打刻する「オーバーストライク」によって製造されており、当時の資源的・政治的制約の中でも自立性と信念を貫いた独立運動の象徴といえます。
保存状態は裏面に一部緑青の出現と摩耗が見られましたが、主な図像と文字がはっきりと判別できるため、資料的価値は十分に維持されています。特に表面のナツメヤシと「シモン」の刻字は明瞭で、反乱政権下における独自貨幣鋳造の証として高く評価できます。
本銀貨は、宗教史・民族史・貨幣史の交差点に位置する特異な存在であり、今日においても学術・美術両面から高い評価を受けています。希少な資料をお譲りいただきましたこと、心より感謝申し上げます。
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