
ビザンツ帝国11世紀中葉のカップ型金貨(サイフォス)を買取らせていただきました。
歴代皇帝の中でも短命かつ政治的に複雑な統治を行ったロマノス4世ディオゲネスの治世に鋳造された、希少性の高い作品です。
この金貨は、1068年から1071年のわずか3年間に鋳造されたと推定され、ビザンツ帝国の中心都市コンスタンティノープルにて発行されたものと考えられます。器のようにゆるやかに湾曲した形状から、「サイフォス(scyphos/ギリシャ語で杯の意)」と呼ばれるカップ型金貨の形式をとっております。
片面には、中央に後光をもつキリスト・パンタグラトール像が配され、両脇には当時の皇帝ロマノス4世と皇后エウドキア・マクレンボリティッサの姿が描かれています。キリストが両者に冠を授ける荘厳な構図は、統治の正統性を神からの祝福として表現するビザンツ美術特有の象徴的場面です。皇帝は十字宝珠を、皇后は信仰を示す仕草を持ち、それぞれの衣装にはロロス(儀礼用ストラ)と冠が繊細に刻まれています。
もう一方の面には、中央にロマノスの継子にあたるミカエル7世、その左右にコンスタンティノス・ドゥーカスとアンドロニコス・ドゥーカスが並び、三者の共同統治体制が表現されています。各人物が王冠を戴き、右手には十字宝珠、左手にはアカイアと呼ばれる袋を持つ姿が刻まれており、当時のビザンツ皇族の複雑な政権構造を如実に映し出しています。
状態は非常に良好で、図像・銘文ともに視認性が高く、縁の装飾も鮮明に残されています。カップ型金貨としての湾曲も美しく保たれており、11世紀ビザンツ金貨の中でも特に象徴性と希少性を兼ね備えた逸品といえます。
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