
ビザンツ帝国初期の金貨、フォカス帝治世中に鋳造されたソリドゥス金貨(Class IIb)を買取らせていただきました。
本品は、602年から610年まで在位した皇帝フォカスによって発行された、宗教的・政治的象徴性の高い作品です。
片面には、儀礼用の衣装を身にまとい、正面を向いたフォカス帝の胸像が表現されています。皇帝は冠を戴き、右手には儀式用の布「マッパ」を、左手には十字架を掲げており、その姿は神聖ローマ的な支配者像として定型化されたものとなっています。顔の描写はやや誇張された目元が特徴で、当時のビザンツ金貨に見られる様式化された造形が明確に現れています。周囲には「DN FOCAS PERP AVG(我らの主、永遠の皇帝フォカス)」との銘文が読み取れます。
もう一方の面には、翼を持つ天使像が立ち、右手にはキリストグラム(十字架を簡略化した聖なる記号)の付いた杖、左手には十字宝珠を掲げています。この構図は、皇帝の神的庇護と勝利を象徴するものであり、天上と地上の権威を統合する図像言語として重要な意味を持っています。銘文「VICTORIA AVCC」は皇帝たちの勝利を祈念する定型句であり、下部に刻まれた「CONOB」はコンスタンティノープルで鋳造された純金貨であることを示す刻印です。
全体として保存状態も良好でした。打刻のずれが少なく、肖像および銘文の視認性が高いため、学術的価値と美術的意匠の双方において非常に優れた一枚です。
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