
ローマ帝国のデナリウス銀貨をお譲りいただきました。
本品は、五賢帝の一人として知られるアントニヌス・ピウス(在位138〜161年)の治世中、おそらく西暦140〜145年頃に鋳造されたと考えられるものです。
片面には、月桂冠を戴いた皇帝の右向き胸像が精緻に表現されており、周囲には「ANTONINVS AVG PIVS P P TR P COS III(皇帝アントニヌス・ピウス、父祖の称号を持ち、護民官職、3度目の執政官)」という銘文が刻まれています。これは皇帝の権威と行政上の肩書きを明示する典型的な表記であり、当時の貨幣制度において皇帝像と官職表記は重要な政治的メッセージを担っていました。
もう一方の面には、ローマ神話の健康と国家の安寧を司る女神サルースが立つ姿が描かれており、右手には祭壇に向けた供物皿、左手には杖と球を持っています。周囲には「SALVS AVG」の銘が見られ、これは「皇帝の健康を祈るサルース」という意味を持ち、皇帝個人の無事と国家の安定を重ね合わせる象徴的な表現となっています。
このタイプの銀貨は、アントニヌス・ピウス治世中の中期にローマ造幣所にて数多く発行され、デナリウス銀貨の中でも極めて象徴性の高い図像構成を持つシリーズとされています。保存状態も概ね良好で、肖像や神像の輪郭は明瞭に保たれておりました。
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