
ローマ帝国五賢帝の一人、トラヤヌス帝(在位98〜117年)の治世中に鋳造されたデナリウス銀貨をお譲りいただきました。
本品は、西暦106年から107年頃にかけてローマで製造されたもので、図像・銘文ともにこの時期の代表的な意匠を備えた一枚です。
片面には、月桂冠を戴いたトラヤヌス帝の右向き胸像が力強く刻まれており、左肩にかかるドレープが丁寧に描写されています。周囲には皇帝の公式称号が刻まれています。
もう一方の面には、ローマ神話に登場する女神フェリキタスが左向きに立つ姿が描かれています。フェリキタスは繁栄・幸運・豊穣を司る神格であり、右手には商業と平和を象徴するカドゥケウス(マーキュリーの杖)、左手には豊穣と繁栄の象徴であるコルヌコピア(豊穣の角)を携えています。周囲には「SPQR OPTIMO PRINCIPI(元老院とローマ市民より、最良の皇帝へ)」という賛辞が刻まれており、皇帝トラヤヌスの治世が国家に安定と繁栄をもたらしたことを示唆する内容です。
本品は肖像の輪郭や神像の姿勢、銘文の可読性も高く、五賢帝時代のローマ銀貨の中でも政治的象徴性と図像の美しさを兼ね備えた逸品といえます。
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