
ギリシャ・ペロポネソス地方の都市国家アルゴスにて、紀元前4世紀(およそ紀元前370〜350年頃)に鋳造されたスターテル銀貨をお譲りいただきました。
表裏ともに象徴的な意匠が刻まれた、当時の都市美術と神話的想像力が結びついた印象的な作品です。
表面には、右向きの女性の横顔が描かれており、頭部には細やかなディアデムが巻かれ、髪は優美なカールを伴って表現されています。顔立ちは穏やかで、ギリシャ古典様式に基づいた神格や都市の守護的存在を想起させます。背景を抑え、肖像の存在感を強調する構成は、古代ギリシャ貨幣彫刻の特色のひとつです。
裏面には、2匹のイルカが流れるように対角上に配置され、中央には翼を持つ四足動物が描かれています。この動物は犬に似た姿で、背中には明瞭な羽が表現されており、現実の動物と神話的存在が融合した構成となっています。イルカは白く丸い目がはっきりと刻まれており、表情をもった意匠として際立っています。全体が旋回的な構図でまとめられており、躍動感と象徴性の高い造形です。周囲にはギリシャ語でΑΡΓΕΙΟΝ(アルゲイオン=アルゴス人の)と刻まれており、都市の自負と文化的背景がうかがえます。
保存状態は良好で、銀の光沢とともに彫りの深さがよく保たれています。図像の立体感や銘文の可読性も高く、古代ギリシャ都市国家における宗教的・美術的価値の高さを伝える資料性豊かな一枚でした。
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