
翡翠の香炉
先日、お客様より、買取させていただいたお品は、翡翠で精巧に彫刻された香炉です。その佇まいからは、時代を超えて受け継がれてきた歴史と、持ち主の方々の深い愛情が感じられます。
まず目を引くのは、香炉の蓋部分に彫られた、ユーモラスな表情をたたえる生き物です。一見すると蛙のようにも、はたまた伝説の霊獣のようにも見え、見る者の想像力を掻き立てます。その生き生きとした表情や、頂部に配された意匠は、職人の遊び心と卓越した技術を物語っています。
香炉本体もまた、見事な造形美を誇ります。どっしりとした三本脚は安定感を与え、その丸みを帯びた胴体には、翡翠ならではの美しい緑色のグラデーションが広がっています。底部から上部に向かって、深い緑色から淡く透明感のある緑色へと変化する様子は、まるで水面に差し込む光のようです。この色の変化は、天然石である翡翠が持つ唯一無二の個性であり、人工物では決して再現できない美しさです。
翡翠は、古来より「玉(ぎょく)」として珍重され、中国では皇帝や貴族が持つ特別な石でした。健康、長寿、そして富をもたらす象徴として、装飾品や祭器に用いられてきました。この香炉も、単なる実用品としてではなく、人々の願いや祈りを込めて大切にされてきたものでしょう。経年による擦れが見られますが、保存状態は良好です。
私たちが査定の際に重視したのは、まずその素材の美しさです。この香炉に使われている翡翠は、透明度が高く、色ムラが少ない良質な石であると判断いたしました。次に、その彫刻の精巧さです。蓋の生き物の表情、脚の曲線、胴体の滑らかな仕上げなど、どの部分を見ても職人の高い技術が感じられます。そして希少性です。このような上質な翡翠をこれだけの大きさで、かつ精巧な香炉に仕上げるには、途方もない時間と労力が必要です。現代ではなかなかお目にかかれない逸品であり、その価値を高く評価いたしました。
私ども古美術永澤では、この翡翠の香炉を、その価値を正しく理解し、次代へと繋いでくださる新たな持ち主の方へと橋渡しするお手伝いをさせていただきます。
この度は、貴重なお品をお譲りいただき、心より感謝申し上げます。またのご利用を心よりお待ちしております。
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