
スリランカ仏教をモチーフにした精緻な装飾皿をお譲りいただきました。銀メッキが施された銅製の本作は、外縁から中心にかけて螺旋状に動物や植物の文様があしらわれており、仏教寺院の入口に据えられる「サンダカダ・パハナ(月輪石)」を模した意匠が確認されます。1963年9月の日付が中央に刻まれており、贈答品として制作された一点物とみられます。
本作に表現されている模様は、スリランカ仏教における輪廻思想を象徴しています。最外周に描かれた様式化された炎は「世俗の煩悩」を表し、内側には誕生を示す象、努力を象徴する馬、成熟と教えを担う獅子、死の受容を示す牛と続きます。さらに、世俗的欲望を表す唐草文様(リヤヴェル)、善悪の識別を象徴するガチョウ、そして中心に向かって咲き誇る蓮は、涅槃へ至る魂の浄化を暗示しています。
こうした文様構成は、スリランカの仏教美術に深く根ざしており、単なる装飾皿を超えて精神性を宿す造形物として位置づけられます。特にこの皿は、レリーフの彫りが極めて繊細で、複数の動物帯を手作業で打ち出したと思われる精緻な技法が用いられていました。加えて、1963年という明確な制作年代が刻まれている点も、資料的価値を高めています。
仏教美術や南アジア文化に関心を持つコレクター層に強く訴求する作品として、高く評価させていただきました。
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