
銀製 簪 (かんざし)
この度、お客様よりお譲りいただきましたのは、見事な銀製の簪(かんざし)です。
この簪は、単なる髪飾りを超えた、まさに工芸品と呼ぶにふさわしい逸品です。
まず目を引くのは、その意匠の精緻さです。団扇型に象られた銀板には、菊花と牡丹が浮き彫りされています。花びらの一枚一枚、葉脈の一本一本が丁寧に彫り出されています。この見事な彫金技術は、熟練した職人の技の結晶です。明治時代から大正時代にかけての、写実的でありながらも華やかさを兼ね備えた表現が特徴的であり、この簪もその時代の作と推察されます。
そして、この簪のもう一つの魅力は、その時代を経た「銀」の風合いです。純銀、あるいは高品位の銀合金で作られていると見られ、全体に落ち着いた、柔らかな銀白色を呈しています。しかし、よく見ると、経年によるわずかな変色(銀特有の黒ずみ)が見られ、これがまた、長い年月を経て持ち主の手に馴染んできた証であり、古美術品ならではの味わい深い表情を醸し出しています。この鈍い光沢は、新品にはない、奥ゆかしい美しさを放っています。
このような簪は、単に髪を飾るだけでなく、女性の社会的な地位や美意識を象徴するものでもありました。特に、これほどまでに意匠が凝らされたものは、特別な日に身に着けられた、あるいは、家宝として代々受け継がれた可能性も考えられます。
古美術品とは、単なるモノではなく、そこに宿る人々の暮らしや文化、そして歴史そのものです。皆様のお宅にも、もしかしたら、このような歴史を語るお品が眠っているかもしれません。
私ども古美術永澤では、専門の査定士が一点一点丁寧に拝見いたします。ご自宅の整理で出てきた古美術品や、価値が分からず処分に困っている骨董品などがございましたら、ぜひ一度、お気軽にご相談ください。お客様の大切な品々の新たな旅立ちを、心を込めてお手伝いさせていただきます。
関連買取実績
-
2025.08.27
-
2025.08.27
-
2025.08.26
-
2025.08.25