
銀製の香箸立(こうばしたて)
今回買取させていただいたのは、繊細な彫金が施された銀製の香箸(こうばし)立です。香箸立とは、香を挟む際に使う「香箸(こうばし)」を立てておくための道具です。
この香箸立は、全体に緻密な透かし彫りが施されており、その技術の高さに目を見張るものがあります。菊などの花々が咲き誇る様子が立体的に表現されており、まるで庭園を銀の中に閉じ込めたかのようです。一部には金彩が施され、銀の渋い輝きの中に、華やかで立体的なアクセントを加えています。
見る角度によって表情を変えるこの彫刻は、熟練した職人の技なくしては生まれ得ないものです。このような見事な彫刻は、明治から大正時代にかけての日本の金属工芸品に多く見られる特徴です。当時の職人たちは、西洋の技術を取り入れつつも、日本古来の伝統的な意匠を融合させ、独自の美意識を確立しました。この香箸立も、そうした時代背景の中で生まれた、まさに美術工芸品と呼ぶにふさわしい逸品です。
銀という素材は、その柔らかさから細かな彫刻に適しており、古くから日本の工芸品に用いられてきました。しかし、純銀に近いほど加工は難しいとされ、緻密な細工は熟練の技術を要します。香箸立は香炉とセットで使われることが多いですが、単体でもその存在感は際立っています。香道具は茶道具や書道具と同じく、道具としての機能美に加え、所有者の美意識を映す嗜好品としての側面も持ち合わせています。
古美術永澤では、お客様の大切な骨董品、美術品を丁寧に査定させていただきます。単なる道具としてではなく、その背景にある歴史や文化、そして作り手の思いまでをも汲み取り、一点一点の価値を正しく評価いたします。
ご自宅に眠っている古い道具や、ご家族から譲り受けた品物など、買取をお考えの品がございましたら、ぜひお気軽に古美術永澤にご相談ください。専門の査定士が、心を込めて対応させていただきます。
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