
このたびお譲りいただきましたのは、日本画壇を代表する巨匠・横山大観による掛軸作品「川渡布袋」です。
横山大観(1868–1958)は、近代日本画の礎を築いた画家として知られ、岡倉天心とともに東京美術学校の創設に携わりました。
伝統的な日本画に新しい息吹を吹き込み、墨の濃淡で表現する「朦朧体(もうろうたい)」を確立したことでも有名です。
その作風は時代とともに変化し、自然・人物・霊性を融合させた独自の世界観を築き上げました。
本作の画題「川渡布袋」はそのままの意味で、布袋が唐子(中国の幼い子供の意味)と一緒に川を渡っている場面です。
これは禅画としては布袋が川を渡ろうとしたとき、水面に映る自分の姿を見て、そこに弥勒の姿を見た、つまり自らが悟りの存在であると悟ったという象徴的な場面です。彼岸を渡ることは「煩悩を超える」ことの暗示であり、この場合の川は俗世と悟りの境界の象徴となっています。
そんな中でも布袋は慈愛に満ちた笑みを浮かべており、布袋の笑いと無心の境地が大観の柔らかい筆致で優しく描かれています。
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