
富木宗好による銀製の金工置物「蘭」をお譲りいただきました。富木宗好は近代の金工家として知られ、銀をはじめとする金属を扱い、龍や動物だけでなく、自然の花や草木を題材にした精緻な作品も数多く手掛けています。その作風は写実性と装飾性を兼ね備え、素材の輝きを生かしながらも、温かみを感じさせてくれる特徴があります。
本作「蘭」もその典型であり、細長く伸びる葉の一枚一枚にまで繊細な彫金表現が施され、しなやかな曲線美が際立ちます。特に花弁部分は金色の表現が施され、銀地との対比によって華やかさと雅を感じさせます。台座に広がる根の造形も非常に写実的で、生命力あふれる蘭の姿を金属で巧みに再現しています。
銀製作品は時代を経るにつれて色調が落ち着き、光の反射が柔らかく変化することから、鑑賞する角度によって異なる趣を楽しむことができます。本作も長年大切に保管されていたため保存状態は良好で、銀の光沢と金彩の対比が美しく保たれていました。
蘭は古来より高潔・気品の象徴とされ、中国や日本の文人趣味とも深く結びついています。そうした文化的背景を踏まえても楽しみことができる鑑賞作品です。
関連買取実績
-
2025.09.11
-
2025.09.09
-
2025.08.26
-
2025.08.25