
青銅 布目 鳥銘々皿
先日、興味深い金工作品をお客様からお譲りいただきました。ご紹介するのは、味わい深い色合いと繊細な彫刻が施された「青銅 布目 鳥銘々皿」です。
この銘々皿は、まるで長い時を経てきたかのような古雅な雰囲気をまとっています。銅という素材の特性を活かし、表面は独特の質感が表現されています。何よりも目を引くのが、皿の底面に描かれた鳥の図です。筆で描いたかのような柔らかい線で、飛ぶ鳥の姿が彫り込まれており、そのさりげない美しさは見る者を飽きさせません。
作品が納められていた木箱には、この銘々皿の来歴を示す重要な情報が記されていました。「青銅 布目 鳥銘々皿」という銘が読み取れます。「布目」とは、生地に布目状の細かい鏨(たがね)跡を施す技法を指します。この銘々皿には、銅の表面に布目状のテクスチャーを加えることで、独特の光沢と奥行きを生み出しているようです。
金工の歴史は古く、奈良時代にさかのぼると言われます。仏教の伝来とともに、仏具や装飾品として高度な金工技術が発展しました。江戸時代に入ると、刀剣の鍔(つば)や小柄(こづか)といった刀装具の需要が高まり、多くの名工が腕を競い合いました。
明治時代以降は、工芸品や生活用具へとその活躍の場を広げ、多くの優れた作品が国内外に輸出されました。この銘々皿も、そのような時代の流れの中で生まれた、ある工芸家の創造の結晶かもしれません。
金工作品の査定では、いくつかのポイントがあります。まず、作品の素材が何であるか、そしてその品質や状態を丁寧に確認します。銅、銀、鉄、あるいは金など、素材によってその価値は大きく異なります。次に、作品に施された技法です。象嵌、彫金、打ち出し、鋳造など、どのような技巧が使われているかをじっくりと見極めます。
また、共箱や識箱の有無、そして箱書きの内容も重要な要素です。もちろん、作品そのものの意匠や美しさも、査定において欠かせない判断基準です。
今回の「銅製鳥図 銘々皿」は、日本の金工技術の奥深さを改めて感じさせてくれる、素晴らしい作品でした。お客様の大切な品を次の世代へと繋ぐお手伝いができたことを、心より光栄に思います。ご自宅に眠っている、価値のわからない金属工芸品や古美術品がございましたら、ぜひ一度、古美術永澤にご相談ください。一点一点、丁寧に拝見させていただきます。
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