
金工作品の印籠
極めて精緻な装飾が施された金工の印籠をお譲りいただきました。
印籠は、江戸時代に武士や裕福な町人が薬などを携帯するために用いた、携帯容器のことです。漆塗りの蒔絵(まきえ)による装飾が一般的ですが、本作は金属素材や彫金、象嵌(ぞうがん)といった刀装具の加飾技術を用いて、絵画的な表現を施した珍しいものです。
絵の主題となっているのは、降りしきる雨のなか、人物が岩場に佇む光景です。旅路の厳しさや何かを予感させる神秘性が漂います。
そして片面には、大きな金色の鯉に乗って波間を進む仙人の姿が表現されています。中国の伝説に登場する琴高仙人(きんこうせんにん)である可能性が高いでしょう。琴高仙人は、長寿や立身出世の吉祥の象徴とされます。
激しい雨の表現、波の繊細な描写、そして金色に輝く鯉の対比が非常にドラマチックで、高度な金工技術の粋を集めた作品です。
このような印籠は、幕末から明治時代にかけて、根付(ねつけ)などの細密工芸とともに発展したもので、これほどの加飾の技巧は、高い技術を持つ金工師によるものと推察されます。
ご自宅に眠る金工品や古美術品がございましたら、ぜひ一度、古美術永澤にご相談ください。
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