
金蒔絵の小箱
金蒔絵が見事な小箱をお譲りいただきました。
黒漆の地に金粉を蒔いて描かれた菊花は、細部まで丁寧に花びらの立体感が表現されています。構図的には、菊花を巧みに配置し、全体にリズム感を生み出しています。余白の美を活かしながら、同時に華やかさも演出しており、職人の高い構成力がうかがえます。
菊は古来より日本文化において特別な意味を持つ花です。奈良時代に中国から伝来したとされる菊は、長寿と高貴さの象徴として重要視され、特に江戸時代には武家や町人階級を問わず愛好されました。この時代は町人文化が花開き、工芸品においても実用性と芸術性を兼ね備えた作品が数多く生み出されています。
今回の品の菊文様は、単なる装飾を超えて、所有者の教養と美意識を表現する重要な要素として機能していたと考えられます。
京都や江戸の蒔絵師たちは、茶道具や文具、装身具など様々な分野で菊を描いた作品を残しており、今回の品もそうした文化的背景の中で生まれたものと言えます。
現在の保存状態は良好で、漆の艶や金蒔絵の輝きが当時の美しさを伝えています。使用痕は多少見られるものの、長年愛用されてきた証拠でもあり、作品の歴史的価値を高める要素として評価できるでしょう。
このような蒔絵作品は、日本の伝統工芸技術の集大成として、また当時の美意識や生活文化を伝える貴重な品として、古美術市場において高い評価を受けています。
もし、遺品整理や実家整理などで蒔絵作品が出てきましたら、ぜひ、古美術永澤へご相談ください。
専門の目利きが丁寧に拝見いたします。LINEでのオンライン査定も行っておりますので、お気軽にどうぞ。
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