
金蒔絵箱
先日、お客様より、素晴らしい金蒔絵の箱をお譲りいただきました。
このお品を拝見してまず目を引くのは、その豪華絢爛な「金蒔絵」の技法です。全体に黒漆を塗り、その上に金粉や銀粉、色漆などで文様を描く蒔絵の技法は、日本の漆工芸の最高峰として発展してきました。特にこの作品は、複数の蒔絵技法が巧みに組み合わされている点が特徴的です。
まず、箱の蓋の表に描かれた「源氏物語」の文字。これは「高蒔絵(たかまきえ)」という技法で、文様を盛り上げて立体的に表現しています。盛り上がった部分に金粉を蒔くことで、文字に力強い存在感と深みが生まれています。
さらに特筆すべきは、文箱の内部です。蓋を開けた内側には、格式高い幾何学文様と、優美な鶴の姿が描かれています。これは「螺鈿(らでん)」という技法が併用されています。アワビや夜光貝の貝殻を薄く削り、文様に合わせて漆に貼り付ける螺鈿は、見る角度によって虹色に輝き、蒔絵の金の光と相まって、格別の美しさを放っています。
幾何学文様は「亀甲つなぎ」で描かれており、吉祥の願いが込められた、大変縁起の良い意匠と言えます。
これらの高度な技法は、どれも熟練の職人によって長い時間をかけて製作されたことを物語っています。箱全体に施された蒔絵の美しさもさることながら、保存状態が良い点も、この作品の価値を高める大きな要因です。また、箱を納めるための外箱も、作品の一部として大切に扱われてきた証です。
今回の箱は、単なる美術品ではなく、日本の伝統工芸の粋を集めた、まさに歴史を語る逸品です。この度は、このような素晴らしい作品をお譲りいただき、心より感謝申し上げます。今後も、日本の美を後世に伝えていくお手伝いができれば幸いです。
古美術永澤では、そのお品が持つ物語や価値を丁寧に評価し、適正な価格で買取させていただいております。ご自宅に眠っている古美術品がございましたら、ぜひ一度、古美術永澤にご相談ください。専門の査定士が、一点一点丁寧に拝見させていただきます。
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