
蒔絵印籠
先日、お客様より大変素晴らしい蒔絵の印籠をお譲りいただきました。この印籠は、日本の伝統工芸技術が凝縮された、まさに美術品と呼ぶにふさわしいお品です。
今回の印籠には、優雅に泳ぐ鯉と、長寿の象徴である亀が、精緻な蒔絵で描かれています。
印籠は、江戸時代に男性が腰から提げて持ち歩いた小型の容器で、薬や印判などを入れていました。着物にポケットがなかった当時の日本で、人々は様々な身の回り品を巾着や煙草入れなどに入れて腰に提げていました。その中でも、印籠は特に身分ある武士や裕福な商人の間で流行し、漆工芸の最高峰である蒔絵の技術が惜しみなく注がれるようになりました。
蒔絵とは、漆で文様を描き、乾かないうちに金や銀の粉を蒔きつけて定着させる日本独自の伝統的な漆工芸です。今回の印籠には、金粉の濃淡や粒子の大きさを使い分け、立体感と深みを表現する高度な技法が用いられています。
鯉のうろこやひれ、亀の甲羅が丁寧に描かれ、水草や水中の情景が躍動感をもって表現されています。特に、見る角度によって光を反射する金の輝きは、印籠に生命を吹き込み、作品全体の価値を高めています。このように、精緻な描写と卓越した技術が融合した蒔絵印籠は、単なる実用品ではなく、芸術作品として美術的価値を持つのです。
今回の査定では、次の点を重視しました。
・蒔絵の作風と時代背景:作風から製作された時代を推定します。
・品物の状態:経年劣化による漆のひび割れ、剥がれ、金粉の脱落がないかを確認します。
・付属品の有無:印籠に付いている「緒締(おじめ)」や「根付(ねつけ)」も査定の重要なポイントです。
古美術品には、時代を超えて受け継がれてきた人々の想いが詰まっています。今回のように、お客様の大切なお品を次の世代へとつなぐお手伝いができることを、私たちは誇りに思います。
ご自宅に眠っている古美術品や工芸品がございましたら、ぜひ一度、古美術永澤にご相談ください。専門知識を持った査定士が、一点一点丁寧に拝見し、その価値を最大限に評価させていただきます。
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