
清瀬一光による「吉祥赤富士」の漆額です。漆黒の背景に、金雲とともに浮かび上がる赤富士を描き、前景には金彩の松をあしらった豪華な構成となっています。吉兆の象徴である赤富士を漆芸で表現することで、縁起の良さと美術工芸の精緻さが融合した作品に仕上がっています。
清瀬一光(二代、本名・進)は1942年石川県金沢市に生まれ、初代清瀬一光の長男として蒔絵技法を受け継ぎました。1975年に帰郷して本格的に漆芸の道に入り、1986年に二代を襲名。1995年には伝統工芸士に認定され、以降も経済産業大臣表彰など多数の受賞歴を誇ります。加賀蒔絵の伝統を忠実に守りつつ、ガラスや象牙、べっ甲などへの応用を通じて表現の幅を広げ、現代に生きる蒔絵師として高い評価を得てきました。
本作は「漆額」と呼ばれる形式で、木製のパネルに漆を塗り重ね、その上に金粉や色漆を用いて絵画的表現を施したものです。漆額は掛軸や絵画と同様に壁面を飾る美術品でありながら、漆の持つ光沢や深みが加わることで、独特の荘厳さと重厚さを感じさせます。特に赤富士の鮮やかな発色と金雲の輝きは、漆芸ならではの質感を際立たせています。
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