
根来塗 (ねごろぬり) の銘々皿
今回は、先日、お客様よりお譲りいただきました美しい根来塗(ねごろぬり)の銘々皿をご紹介します。
根来塗は、赤と黒のコントラストが特徴的な日本の伝統的な漆器です。その歴史は古く、室町時代中期から紀州(現在の和歌山県)の根来寺で生産が本格化したことに由来します。
僧侶が日常的に用いた什器で、根来寺ゆかりの職人が制作したとされます。木地に黒漆を塗った後、その上から朱漆を塗り重ねるのが根来塗の基本的な技法です。寺で使われていたため、装飾的な技巧を凝らすのではなく、実用性を重視した素朴で力強い作風が特徴とされます。
長年使い込むうちに表面の朱漆が少しずつ剥がれ、下の黒漆が露わになることで、独特の表情が生まれます。この「使い込むほどに美しくなる」という経年変化こそが、根来塗の最大の魅力であり、多くの愛好家を惹きつけています。
今回のお品は、根来塗の銘々皿です。銘々皿とは、お料理を一人分ずつ取り分けるための小皿のことです。木箱に収められたお品は、長い年月を経たにもかかわらず、その佇まいはとても上品で、根来塗らしい温かみのある朱色が美しく保たれています。
一般的に根来塗は、日用品として使う中で自然に朱が剥がれて下の黒が見える「景色」が評価されますが、特に目立つ傷や汚れもなく、古格を保った良好な状態で保管されていました。
根来塗は、天正13年(1585年)の豊臣秀吉による根来寺焼き討ちによって、一時期生産が途絶えましたが、江戸時代以降にその美しさが見直され、現代に至るまで多くの漆芸作家によって受け継がれています。このお皿も、そうした歴史の中で大切にされてきたものと思われ、作り手の想いや歴史の重みが感じられる逸品です。
「これは価値があるのかな?」とお悩みのお品物がございましたら、ぜひ一度、古美術永澤の査定をご利用ください。専門の査定士が、お品物一つひとつの歴史的背景や美術的価値を丁寧に拝見し、適正な価格をご提示いたします。
根来塗をはじめとする漆器の他、陶磁器、掛け軸、茶道具など、幅広いジャンルの美術品に対応しております。出張査定、LINE査定も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
関連買取実績
-
先日、貴重な日本の伝統工芸品である金蒔絵が施された六角皿を買取させていただきました。江戸時代から続く伝統技術の粋を集めたかのような、見事な作品です。 特に、器の縁を飾る金雲と、流れるような海の文...
2025.10.03
-
2025.09.30
-
2025.09.25
-
2025.09.19