煙草入前金具

煙草入前金具をお譲りいただきました。当時の職人による精巧な細工が施された貴重な品です。

煙草入は江戸時代に武士から庶民まで幅広く愛用された実用品でしたが、同時に身だしなみや趣味性を表現する装身具としての側面も持っていました。特に前金具は人目につきやすい部分であるため、各々が競ってユニークな意匠のものを求めたのです。

上の金具は、恵比寿様をモチーフとした意匠が特徴的です。恵比寿様は商売繁盛の神として親しまれ、煙草入の装飾としても人気の高いデザインでした。彫金技術は非常に高く、衣装のひだや表情の細かな表現まで丁寧に表現されています。経年による自然な古色が味わい深い風合いを醸し出しています。

下の金具は波千鳥を描いた古典的な意匠の前金具です。波千鳥は、平安時代から愛され続けてきたデザインで、流れるような波の表現と、その上を舞う千鳥の優美な姿が見事に表現されており、当時の職人の高い技術力を物語っています。

査定では、どちらも大きな欠損がなく、良好な保存状態を保っている点、彫りの深さや細部の表現が鮮明に残っている点を評価いたしました。

これらの金具に見られる彫金技術は、江戸時代の金工職人たちが培ってきた伝統技法の結晶です。

このような伝統工芸品は、その歴史的価値と芸術性を正しく評価することが重要です。古美術永澤では経験豊富な査定士が、作品の時代背景、技法、保存状態などを総合的に判断し、適正な価格でお買取りさせていただいております。

煙草入や根付などの江戸時代の小物類をお持ちの方は、ぜひ一度古美術永澤までご相談ください。思わぬ価値のある品物が眠っているかもしれません。