
白色尉を模した帯留めをお譲りいただきました。にこやかな笑顔と穏やかな眼差しが印象的で、長く伸びた髭や渦巻状の髪飾りなど、能面の白色尉の特徴を丁寧に再現した造形が施されています。
「白色尉」は、能楽において特別な意味を持つ面のひとつで、演目『翁』などに用いられます。翁面の中でも白色尉は、老年の人物を表しながらも、神の化身として祝福や長寿、五穀豊穣、国家安泰などの祈りを込めた象徴的存在とされています。そのため、通常の登場人物とは異なり、神聖で崇高な面として位置づけられており、能の中でも別格の面とされてきました。
この帯留めは、そうした白色尉の意匠を小型に転写し、和装の場においても祝意を身につけることができるように工夫されています。とくに正月や結婚式、節句などの慶事の際に用いられることが多く、単なる装飾品ではなく、着用者の気持ちや場の格式を表す意味合いも持ち合わせています。
笑顔の中に神聖さを湛えた表情は、能面特有の静けさと強さを感じさせ、身に着ける人だけでなく見る人の心にも安らぎを与える造形です。今回の査定では、素材や彫刻の技術はもちろんのこと、こうした能楽文化に根ざした深い象徴性をもつ意匠である点を高く評価し、買取させていただきました。
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