
方位磁針
今回は、先日、お客様よりお譲りいただいた古風な方位磁針についてご紹介させていただきます。
この方位磁針は、単なる羅針盤としての機能を超えた、歴史と物語を感じさせる逸品です。まず目を引くのは、その無骨で堅牢なデザイン。戦時中のものか、あるいはそれに近い時代の軍用・測量用として使われていたものではないでしょうか。文字盤には細かく目盛りが刻まれており、高い精度が求められる場面で活躍していたことが想像されます。
また、真鍮製のボディは長年の使用により黒ずみ、ところどころに錆が見られます。これは、この方位磁針がたどってきた長い道のりを物語る、いわば「勲章」のようなものです。特に、側面の調整ネジや、上部のリング部分に見られる摩耗は、幾度となく持ち主の手に握られ、様々な場所へと旅をしてきた証でしょう。
この方位磁針を手に取ると、当時の人々がこの羅針盤を頼りに、見知らぬ土地を進んでいった様子が目に浮かびます。広大な荒野を測量する技術者、あるいは戦場で進路を定める兵士。それぞれの持ち主にとって、この方位磁針は単なる道具ではなく、自身の命運を左右する、まさに「羅針盤」そのものだったはずです。
現代のデジタルな地図やGPSが当たり前になった今、このようなアナログな方位磁針には、改めてその存在の重みを感じさせられます。電池も、電波も必要としない、ただ地球の磁場と向き合うだけのシンプルな機構。その不変性が、かえって私たちに確かな安心感を与えてくれます。
弊社にてお預かりしたこの方位磁針は、今後、新たな持ち主のもとで、また別の物語を紡いでいくことでしょう。このような歴史あるお品物を次の世代へと繋いでいくお手伝いができたことを、大変光栄に思います。
古美術永澤では、今回のような古美術品はもちろんのこと、ご自宅に眠っている古い道具や、価値の分からないお品物でも、一つひとつ丁寧に拝見し、適正な価値を判断させていただきます。もしかすると、ご自宅の片隅に、まだ見ぬ歴史の宝物が眠っているかもしれません。
古美術品に関するご相談や買取をお考えの方は、どうぞお気軽に古美術永澤までお問い合わせください。経験豊富な査定士が、お客様の思い出とともに、お品物を大切にお預かりさせていただきます。
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