
吊り下げ式の装飾オイルランプです。ピンク色の型押しシェードと青色ガラスの油壺を備え、両脇には鳥の意匠を配した金具が組み合わされた、日本大正期の国産品と考えられます。
当時は西洋文化の流入が急速に進み、生活様式や室内装飾にも欧米の意匠が盛んに取り入れられました。オイルランプもその代表例で、ヨーロッパのハンギングランプを模倣しながら、日本的な美意識や意匠が加えられることで独自の様式が生まれました。本作に見られる蔓草模様のシェードや、鳳凰を思わせる鳥の装飾は、その折衷的な感性を如実に伝えるものです。西洋の機能的な形態と、日本的な象徴的デザインが一体化した姿は、大正期ならではの美術工芸の特徴といえるでしょう。
また、こうしたランプは実用品であると同時に、旅館や商家を彩る装飾品として広く普及しましたが、ガラス部分の破損や金具の劣化により、当時のままの組み合わせで現存するものは多くありません。特にオリジナルのシェードと油壺が揃った個体は希少で、当時の生活文化を示す資料的価値が高いと評価されます。
本作は、単なる照明具を超えて、西洋化と日本的意匠の融合という大正期の時代精神を映す一点であり、壊れやすさゆえに今日まで残ること自体が貴重といえる作品です。
関連買取実績
-
2025.09.03
-
2025.09.03
-
2025.09.03
-
2025.09.03