
虎杢(とらもく)の煙管(きせる)入
お客様が大切にされてきた、素晴らしい煙管入(きせるいれ)をお譲りいただき、誠にありがとうございます。
今回、お客様より買取させていただいたのは、時代を経た趣のある木地に、見事な細工が施された煙管入です。一見して、その圧倒的な存在感と、丁寧な手仕事に目を奪われます。
まず、素材の木地をご覧ください。年輪の美しい木目が力強くうねり、まるで生きているかのようです。この虎の毛のような模様は、虎杢(とらもく)と呼ばれるもので、貴重な木材にのみ現れる稀な現象です。特に、これほど大胆で鮮明な杢目は、並大抵の木材からは生まれません。長年の使用により、使い込まれた表面は深い飴色に変化し、つややかな光沢を放っています。
そして、この煙管入の真骨頂は、その装飾にあります。木地には、銀などで象嵌(ぞうがん)された笹と竹の文様が施されています。それぞれの素材が持つ異なる輝きが、見事に調和しています。特に竹の節の部分は、丁寧に彫り込まれており、立体感が際立っています。
さらに、細部にもこだわりが見られます。笹の葉の一枚一枚に施された葉脈の彫り込み、竹の節の精巧な表現、そして、燻(いぶ)しによって色を変えた銀の葉の色合い。これらの細やかな装飾は、見る者を飽きさせません。
このような煙管入は、単なる喫煙具ではなく、持ち主の教養や美意識を象徴する、まさに「粋」の極みと言えるでしょう。江戸時代から明治時代にかけて、武士や文人、町衆の間で、精緻な細工が施された煙管入や煙草入(たばこいれ)を身に着けることが流行しました。職人たちは、限られた素材の中で、いかに独創的で美しい作品を生み出すかに情熱を注ぎました。
今回お譲りいただいた煙管入も、そのような時代背景の中で生み出された逸品です。長い年月を経て、なお失われることのない美しさは、時代を超えて人々の心を惹きつけます。
古美術永澤では、このような煙管入や根付(ねつけ)、印籠(いんろう)といった装身具、また茶道具、書画、骨董品全般の買取を行っております。買取をお考えの際は、どうぞお気軽にご相談ください。専門の査定士が丁寧に拝見し、適正な価格で買取させていただきます。
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