
面寄 木彫 根付 (めんよせ もくちょう ねつけ)
お客様の貴重なコレクションより、このたび大変見事な「面寄 木彫 根付 (めんよせ もくちょう ねつけ)」を買取させていただきました。
こちらは、複数の能面や狂言面、さらには民俗芸能の面を緻密な彫刻で表現した、まさに圧巻の逸品です。一見して、その存在感と細部にわたる精緻な仕事に目を奪われます。一つ一つの面には豊かな表情が宿り、見ている者を飽きさせません。
根付とは、江戸時代に煙草入れや巾着などを帯から吊るす際に、留め具として用いられた小さな工芸品です。当時は身分を問わず、粋な装飾品として愛用されました。その中でも、饅頭根付は、球状または円盤状の形をしており、表面に立体的な彫刻が施されているのが特徴です。その形状から「饅頭」と呼ばれました。
今回、買取させていただいた作品は、単なる根付としての機能を超えた、まさに彫刻芸術と呼ぶにふさわしいものです。
まず目を引くのは、中央に配された、なんとも愛嬌のある赤い顔の面です。囲むように、表裏にお多福、鬼、翁、さらに狐などの面が所狭しと配置されています。それぞれの面は、大きさや向き、そして表情が微妙に異なり、まるで小さな舞台の上で演じられているようです。見る角度によって異なる表情が顔をのぞかせ、飽きることがありません。
また、特筆すべきは、その彫りの深さと立体感です。面の輪郭はシャープに、しかし柔らかく彫り込まれ、まるで本物の面をそのまま縮小したかのようです。さらに、彩色も絶妙で、それぞれの面の個性を際立たせています。特に、中央の赤い面は鮮やかな朱色で、他の燻されたような暗い色調の面々とのコントラストが美しく、全体を引き締めるアクセントとなっています。
詳しい銘などは確認できませんでしたが、この高度な技術と芸術性は、当代一流の根付師の手によるものと推測されます。時代を経た木肌の艶やかさや、微細な擦れも、この作品が多くの人々の手によって大切にされてきた証です。
日本の伝統工芸の粋を集めた、この饅頭根付の価値を正当に評価し、次に大切にしてくださる方へと責任を持って繋いでまいります。
古美術品、骨董品、根付の買取をご検討中のお客様は、ぜひ一度、古美術永澤にお気軽にご相談ください。専門の査定士が、一点一点丁寧に拝見し、適正な価格で買取させていただきます。
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