
神坂雪佳(かみさかせっか)の図案を取り入れた絹布の掛袱紗(かけふくさ)です。
「掛袱紗」とは、進物や貴重品の上に掛ける袱紗のことを指し、厚手の布で仕立てられるのが一般的です。贈答文化の中で、品物を直接見せず、袱紗を掛けて丁寧に差し出すことで礼を尽くす役割を担います。
裏表でまったく異なる模様をもつ作りで、贈答用の掛袱紗として用いられたものと考えられます。両面で違う意匠を楽しめる点は格の高さを示しており、贈答文化の中で礼を尽くすための特別な布として仕立てられたことがうかがえます。
地色のやわらかな絹布に小花が散らされた文様は、上品で清らかな印象を与えます。表裏で趣きを変えることで、贈る相手や場面に応じて使い分けることができ、進物をより丁寧に見せる役割を果たしてきました。絹ならではの光沢とやわらかさが加わり、所作に華やかさと奥ゆかしさを添えています。
神坂雪佳は琳派の美を近代に蘇らせた図案家で、『百々世草』をはじめとする図案集を通じて、染織や陶磁器、漆芸など幅広い工芸に影響を与えました。この掛袱紗に表れた意匠もまた、自然を装飾的にとらえ直す雪佳らしい図案美の一例といえるでしょう。
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