
木彫の果実
先日、貴重な木彫の古美術品をお譲りいただきましたので、買取実績をご紹介させていただきます。いずれも木材を用いて精巧に象られた果実の彫刻です。
左の、独特な形状が目を引く木彫は、仏手柑(ぶっしゅかん)を表しています。その複雑に入り組んだ指のような形状までが、木肌の温かみとともに見事に表現されており、熟練の職人の手仕事の跡がうかがえます。仏手柑はその名の通り、仏様の指を思わせることから縁起物として珍重されてきました。木彫においても、その独特の姿は古くから題材とされてきた歴史があります。
右の木彫は、熟して口を開けた「柘榴(ざくろ)」を象ったものです。割れた果皮から覗く粒の一つ一つに至るまで、その瑞々しさまでもが木彫で表現されており、思わず手を伸ばしたくなるほどの写実性には感嘆するばかりです。柘榴は古くから子孫繁栄の象徴とされ、吉祥文様としても多くの美術品に用いられてきました。
中央の木彫は、葉付きの「柿」です。今にも枝から落ちてきそうなほどに熟した柿の丸みと、葉脈までが繊細に彫り込まれた葉の対比が、自然の生命力を感じさせます。柿もまた、豊かな実りや長寿を象徴する縁起の良い果物として、古くから親しまれてきました。
これらの木彫は、それぞれ異なる果実を題材としながらも、共通して言えるのは、木という素材の特性を最大限に活かし、対象物の質感や生命感を余すところなく表現している点です。木彫の魅力は、その温かみのある質感はもちろんのこと、経年による色合いの変化もまた味わいとなり、見る者を飽きさせません。
今回お譲りいただいた作品群は、いずれも保存状態が良く、特に目立つ傷や汚れもありませんでした。繊細な彫り口からは、作者の類まれなる観察眼と、それを形にする高い技術力がうかがえ、美術品としての価値も高いと判断させていただきました。
私ども古美術永澤では、お客様が大切にされてきた古美術品の価値を正しく評価し、次へと繋ぐお手伝いをすることを喜びとしております。もしご自宅に眠る古美術品がございましたら、ぜひ一度、私ども古美術永澤にご相談ください。一点一点丁寧に拝見し、その価値を最大限に評価させていただきます。
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