
このたびは、西アフリカ・マリ共和国に暮らすドゴン族の木彫像をお譲りいただきました。黒褐色に風化した木肌と縦に伸びたシルエットは、彼らの彫刻に特有の美意識をよく伝えています。首や胸元に通されたビーズの装飾もまた、単なる飾りではなく、祈りや力を宿すための大切な要素として加えられています。
ドゴン族は古くから独自の宇宙観と祖霊崇拝を守り続けてきた民族です。祖先の魂は子孫を見守り、村を災いから守る存在と考えられ、こうした木像は祖霊とのつながりを保つために大切に扱われました。特に直立する人の姿は、祖霊が地上と天を結ぶ媒介であることを象徴しており、村人たちは儀式の際にこの像を通して祖先に祈りを捧げました。
造形の特徴である細長い顔や体、突き出した口は、写実ではなく象徴的な意味を重視した表現です。口は言葉と息を司る力の源であり、命の循環や祖先の声を示すものとされました。縦に伸びるプロポーションは大地から天へ向かう祈りを形にしたものとも解釈され、精神的なつながりを表しています。
関連買取実績